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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 4 総務部課長

「ホント、あの言い方ムカついたわ…」
 人事部を出るとすかさずゆかりがそう言ってきた。

「まあ、仕方ないさ…」
 そして私はゆかりにさっきの、
 無闇に敵は作らない…
 旨の話しをし、諭したのである。

「はい、はい、それはわかりますけどぉ…」

「ガマンさ…」

「なんか本当なんですね…」
 まだ納得いかない感じでゆかりが言ってきたのだ。

「本当って…」

「笠原主任が前に…」
 大原くんも大分丸くなったのよ…
 って言ってたから。

 昔はものすごく尖っていたのよ…
 っても言ってたんです。

 丸くなった…か

 少しドキッとしたのだ、やはり、私は丸くなったのか…
 
「なんかダメだな…」
 つい、ポツリと呟いてしまう。

「あ、そんな意味じゃ…」
 わたしは今の本部長が好きだから…
 ゆかりはそう慌てて繕ってきたのだ。

「うん、ま、そうだな…」
 だが、それではダメなのだ。

 さっきの鈴木人事部部長のようなはっきりしない、いわゆる陰の敵、になるような輩はこれからもどんどん成功と比例して現れてくるのだ、そしてそれはゆかりに対しても同じなのである。
 こんな丸くなっていてはこれから先の荒波を乗り越えられないし、このゆかりの事も守ってやれないかもしれないのだ。

 ダメだな、もっと、いや、やっぱり、また、昔のように、ギンギンに尖っていかなくては…

 そう想いながら私達は人事部を後にして総務部に向かった。
 そして総務部では、急遽の蒼井美冴の正社員雇用制度適用による手続き等をすませ、その他、吸収合併した保険会社からの異動の手続き等の手配を頼む。

「この蒼井美冴さんて方は大分優秀なんですねぇ」
 と、総務部課長が資料を読みながら言ってきたのだ。
 この総務部部長、課長も山崎専務派なのである。

「ヘッドハンティングですか…」
「いいえ、人材派遣会社からの雇用です…」
 そうゆかり部長が言う。

「ああ、貴女が噂の佐々木ゆかり部長さん…」
「えっ、噂って…」
「ダメですよ、もう本社内では貴女の部長昇進は知らない人はいない位なんですから…」
 そう言ってくる総務部課長の目が鋭く光る。

 ボヤっとしてたら寝首を掻かかれるぞ…

 まるでその目がそう言っているかのようであったのだ。





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