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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 13 電話帳…

 そうだ、家ではいつも本を読んでいたのだ…
 長期の休みはいつも本を読んでいた、図書館に毎日のように通っていたのだった。
 だから寂しくなかったのだ。

 あ…
 でも高等部時代は何人かの家に遊びに行った記憶がある…

 あ…
 だが、つまらなかったのだ…
 そうだ、女同士の見栄の張り合いや、噂話や、悪口が嫌だったのだ、面倒くさかったのだ…
 そうなのだ、自分から一人になっていったのだ…
 思い出してきた。

 大学の『姫』と呼ばれていた時代は逆にいつも回りに誰かしか必ずいた、それも殆どが不純な目的で近寄ってきていた男達であったのだ…
 だが、同性の女性は殆ど回りにはいなかった、いや、自分から避けて、離れていっていたのである。

 だから友達などいなかったのだ…

 女友達などいらなかったのだ…

 だから寂しい記憶などもないのだ…
 だが、それは、普通ではないのである。

 女同士でお茶飲みに行ったり、買い物に行ったり、食事に行ったり、映画、演劇を観たり、旅行に行ったり、電話で話したり、恋バナしたり…
 それらが普通なのだ。
 わたしはふと携帯電話の電話帳のメモリーを開いて見る。

 あ…
 会社の関係者、実家、親、そして大原浩一本部長…

 それしかいない…

 あ…
 笠原主任、笠原響子さんがいる…
 それだけであったのだ。

 普通じゃない…

 のだ…

 初めて実感した。

 そして、今、初めて、寂しいと思ってきていた…
 初めての感情であった。
 これが違和感であり、違和感の正体であったのだ。

 寂しい、イコール、普通なのである…
 そしてこの違和感はわたしの変化なのである。
 この変化は大原浩一を好きになる、愛し始める、これが始まりなのだ。
 そして、愛、これが嫉妬心を生んだのであった。

 初めての嫉妬心…
 そしてそれは『黒い女』、蒼井美冴によってもたらされた想いなのである。

 大原浩一本部長が当時の『黒い女』に向けたあの目が、この嫉妬心を生んだ、初めての嫉妬心を生んだのであった。

『黒い女』蒼井美冴…

 そうだ、この全ての変化を生んだきっかけは蒼井美冴という存在のせいなのである。

 蒼井美冴…
 彼女の妖しい、魅惑的な美しさが、この変化、嫉妬心を生んだのだ。
 初めて嫉妬心というモノを意識したのであった…


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