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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

  10 稲葉ディレクター(4)

「それは違うんだなぁ…」

「え、違うって?」
 彼、稲葉ディレクターは目を輝かせながら言ってくる。

「ほら、あの頃遊んでいたお坊ちゃま連中やVIPメンバーだった連中は今や…
 ホテルの支配人やら、有名俳優やら、超一流企業の世襲跡継ぎやら…」

 わたしはザワザワと、心が騒めいてきていた、そして、彼が、稲葉ディレクターが何を言わんやとしているのか…
 何となく分かってきたのだ。

「……………」

「ほら、あの連中、輩達は皆、いや、ほとんどが日本経済界の中心に関わってきているような年齢や立場になっていてさぁ…」

「あ…」

「だから、そんな、あの頃の、若い時代の遊んでいた事なんて…
 いや、あの頃は、あの当時の事は…
 若気の至り等なんて誤魔化せ無いような内容だったから…」

「あ、う…」

「そんな昔、あの頃の話題や存在なんて…
 触れたくもないんだよ、いや、その筈なんだ…」

「あ…」

 確かにその彼、稲葉ディレクターの言葉は至極最もであるかもしれない…
 いや、その通りなのだ。

 あの頃…

 大麻、コカイン、麻薬、乱交…

 とても人前では、いや、他人に若気の至りだったなんて話せるレベルでは無くて…

 わたし自身がそうである様に…

 万が一暴露し、いや、暴露されたならば、自身を滅ぼしかねないレベルの過去であるのだ。

「だからさぁ、今更、ゆかりお嬢さんが表れて、世間で注目を浴び、いや、脚光を浴びたとしてもさぁ…
 迂闊な事は言ってこないし、もちろん邪魔なんかしないしさぁ…

 いいや、逆に、バックアップ、スポンサーになってくれる筈なんだよ…」

「あ…」

 確かに彼の言葉は至極最も、いや、一理ある…
 万が一、過去が暴露されようなら、大変な騒動、スキャンダルに成りかねず、自分自身の足元を掬われる、いいや、崩し、崩壊しかねない、そんな過去なのだ。

「だから、そんな心配は要らないさ…
 皆、自分が一番だし…」
 と、彼はハッキリと、いや、自信満々に言ってきた。

「あ…う、うん、そ、そうかも…」

 だけどわたしは、そんな彼の自信満々の表情、言葉、声音に少しだけ違和感を感じたのだ…

 それは…



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