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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 11 稲葉ディレクター(5)

「だから、そんな心配は要らないさ…
 皆、自分が一番だし…」
 

 だけどわたしは、そんな彼に少しだけ違和感を感じたのだ…

 それは…

「え?、あ、ま、まさか…」

 わたしがその違和感の疑問を言葉にそう漏らすと…

「いやぁ…」
 そうとだけ呟いて、ニヤリと笑みを浮かべてきたのだ。

「え、そ、そうなんだ?」

 そんな稲葉ディレクターの笑みを見た瞬間、わたしの脳裏にはさっきの彼の言葉が浮かんできた…

『だから、そんな、あの頃の、若い時代の遊んでいた事なんて…
 いや、あの頃は、あの当時の事は…
 若気の至り等なんて誤魔化せ無いような内容だったから…

 そんな昔、過去のあの頃の話題や存在なんて…
 触れたくもないんだよ、いや、その筈なんだ…』

 それはわたしもそうである様に…

 あの当時の、あのメンバー達にとっては、皆が、わたしと同じ様に、あの頃の事は…
 今更触れて欲しくない『黒歴史』であり、いや、人生の汚点、スキャンダルなんだ。

「あっ」
 そしてわたしは、閃いてしまった。

「そうか、そういう事なの?」

 それはあの『夢の国』でのホテル予約の無理なお願いも然り…

「あ、え、いや…」

 彼は意味有りげにも呟く…

「だから、簡単に頼めたし…
 番組のスポンサーにもなってくれる?…」

 つまりは彼に昔の汚点、スキャンダル、弱みを握られてるから…

「いや、そんな強気には言ってはないよ、だって下手したら恐喝になっちゃうから…

 だけど、あの頃の殆どのメンバー達は…
 協力してくれる…」

「そ、そんな…」

「あ、もちろんビジネスパートナーとしてだよ…
 こっちは番組とかのスポンサーになってもらい、向こうは宣伝、広告にもなる…」
 
「…………」

「つまりは持ちつ持たれるの…
 イーブンな関係だよ…」

 イーブンな関係…

 果たしてそうなのだろうか?

 あの頃の、あの当時の稲葉ディレクターに於ける立場は決してイーブンではなく…
 まるであの当時のVIPメンバー達の、女を調達する使いの役目だった筈だ。

「皆、あの頃のメンバー達は比較的にすんなりと協力してくれるんだよ」

 そうか、今はある意味立場は逆転している訳だ…

「それに俺はさぁ、全然、無理矢理には推してはいかないから…」




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