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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 17 ロッキー…(3)

「おぉ、キミが新宿の『姫』かぁ?」
 初めて会った夜、ロッキーはそうわたしに声を゙掛けてきた…
 既にわたしは新宿のディスコ界隈ではそう呼ばれていたのだ。

 そしてまた…
「簡単にヤらせてくれるんだって?」
 そうも話してきた。

「え…」
 
 失礼な男…
 その瞬間そう思ったのだが、否定はしなかった、いや、否定できなかったのだ。

 だって…
 それはほぼ事実だったから。

 いや、正確にはあの頃は何人の男と寝ても、抱かれてもある程度の快感を感じるのだが…

 絶頂感、エクスタシー、つまりイクという体験だけが得られなく…

 ある意味、欲求不満、いや、フラストレーションを溜め込んでいて、絶頂感、エクスタシー、イクという快感を体験したくて…
 言い寄ってくる男と寝まくり、抱かれまくりしていたから。

 だから否定ができなかったのだ…
 だが一度寝た男とは二度は寝なかった。

 なぜなら、その頃のわたしは本当に絶頂感を求めて抱かれていたから、一度寝て絶頂感が得られなければわたしにとっての価値は無い…
 いや、ゼロといえたから。

 しかし、廻りの男達からしたらそんなわたしの思い、切望等は分かるはずもなく、いいや、理解できるわけもなく…

 ただ単に、おだて、持ち上げ、チヤホヤとすれば簡単にヤらせる女、軽い女…
 つまりはヤリマン女としても陰では云われていたのであった。

 今、思い返しても、本当に馬鹿で、間抜けで…
 正に『黒歴史』と云えたのである。

 そして…
 よく病気や妊娠等のトラブルにも巻き込まれなかったと思っていた。

 だから、彼、ロッキーに初めて声を掛けられ、そう揶揄されても…
 否定は出来なかったのだ。

 それにその声掛けで、どうせ、また、コイツも今までの男達と同じなんだろう…

 そう簡単に思えたから、軽くあしらおうと思っていたのであったのだが…

「なんかイキたくて堪らない顔してるなぁ…」

「え?」

 わたしの顔を見て、ズバリ、そう云ってきた、いや、言い当てたのだ。

「え、な、なんで?」

 何でわかるの?…
 とは、訊けなかったが、わたしはすかさず反応してしまったのである。

「いや、キミの『お姫さま』の顔見ればわかるさ」

「え?」

 そう、彼、ロッキーは、わたしを…
『お姫さま』と呼んだ…


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