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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 17 華…

「ああ、そうなんだよ、それにすごい美人だし、すっかり本社内の話題の中心になっていてな…」
 山崎専務がそう言ってきた。

「そんなに美人なんですかぁ、見てみたいわぁ…」
 律子が私の目を見ながらそう言った。

 おい…
 ある意味、私を攻めているようである。

「そうだな、そうだ、今度、チラっと連れてくるかっ」
 まるで山崎専務にそう言わせるようにうまく誘導しているみたいであった。

 やられた…
 あの逃げ帰るように帰った仕返しだと思われる。

「わぁ、そうですよ、見てみたいです、ねえ、大原さん」
「あっ、うん…」

 くそっ、完全にやられた、仕返しだ…
 律子の美しい目が意地悪気に秘かに輝いていたのだ。

「そうだな、あと、金曜日の会見にも同席させようか…」
 準備室室長だし、実質の責任者な訳だし、何より華があるから…
 山崎専務はそう語る。

 それは確かにそうなのだ、ゆかりが、佐々木ゆかり部長が同席した方が間違いなく華があり、絵にもなる。

「ただ…」 

「うん、何だ…」

「華になり過ぎて、話題がそれちゃいませんか…」 
 あくまでも話題は吸収合併の完全子会社化の事実上の乗っ取りと、全く新しい、これからの時代の先駆けとなる仕組みの新規生命保険事業計画の発表なのだ。

「うーん、なる程なぁ…」
 万が一、美人新部長、新準備室室長が話題にズレてしまったら山崎専務の仕掛けた吸収合併が霞んで仕舞う可能性もあった、その位に佐々木ゆかりは華があり、絵になる可能性は秘めていたのである。

「そうだなぁ、逆に余りにも派手になり過ぎる可能性があるなぁ…」
「はい、多分に…その恐れはあるかと…」
 しばらく山崎専務は考える。

「そうだな、やっぱりスタートはおじさんばかりの地味に行くか」

「おじさんばかりって…」
 そこには律子が思わず反応した。

「うん、私と、山崎専務と、向こうの社長と、専務の四人かな…」
「あら、それはまた、ある意味素敵ですね…」
 さすがに巧い、律子の言葉であった。

「そうか、素敵か…」
 山崎専務がすっかり上機嫌に反応する。
 さすがおじさん転がしはプロであった。

「そうだな、新生命保険の発表の時には彼女に、派手に登場してもらうか…」
 じゃないと、私の実績が霞んでしまうかもなぁ… 
 そう山崎専務は呟いたのである。



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