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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 18 アフター

 「そうだな、新生命保険の発表の時には彼女に、派手に登場してもらうか…」
 じゃないと、私の実績が霞んでしまうかもなぁ… 
 そう山崎専務は呟いたのである。

 そうなのである、万が一、ゆかりばかりが先行して違う意味で注目を浴びてしまうと、悪戯に敵が増える可能性もあり、やりにくくなってしまう恐れがあるのた。
 ただでさえ、人事部部長のように彼女の部長昇進を面白く思っていない見えない敵は多分、数多いる筈なのである、ここで寝ている輩を無駄に起こして敵を増やす事はないのである。
 そしてこの記者会見のシミュレーションは秘かに何度となく私は考えていた結果なのである。
 その位にゆかりの美人度は注目に価するのだ。

「でも、今度、その美人新部長さんを、一度連れてきてくださいませ…」 
 今夜の律子はやけに攻めて、いや、責めてくる。

「そうだな、彼女は大原くんの直属の部下だから、是非とも誘うことにするよ、なあ、大原くん」

「は、はい…」
 
 やられた、完全に私の負けだ…
 そう目で訴える、と、律子は笑みで返してきたのだ。

「さあ、どうぞ…」
 そして二杯目のブランデーを注いでくる。

「律子さん、すいません…」
 するとバーテンが指名の声を掛けてきた。
 例の二代目の金融会社若社長からの指名である。
 途端に律子の目が哀しそうに変わった。

「まだ、いてくださいね…」
 律子はそう小さい声で囁いて席を離れる。

「相変わらず来てるんだな…」
 律子の想いを知っている山崎専務はそう呟いた。

「そうなんですよ、まあ、二日と開けずに通ってくれて…」
 お金も遣ってくれてるから…
 ママも律子の想いは知っているから、何どもいえない表情で応えてくる。
 前回も感じたのだが、あまりあの若社長の遊び方が好きではないらしいのだ、銀座ではただお金を遣えばいい訳ではないのである、銀座には銀座の独特の遊び方のルールがあるのだ。

 それに水商売は難しい…

「大原さん、少し待ってあげてね…」
 そんなママの言葉に黙って頷いた。


 そして30分ほどしたら律子は戻ってきた。

「大原さんごめんなさい…」
「いや、大丈夫だよ」 
「わたしをアフターに誘って…」
 律子はそう言ってきたのだ。

「おお、そうしようか…」

「それがいいわね…」

 




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