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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 69 敦子の想い(6)

『あら、アナタ可愛い顔してるのねぇ』
 すると、わたしの顔をジッと見つめてそう囁き…
『あ、えっ…』
 なんと、わたしの肩をスッと抱き寄せ、そして…
『うぅ…』
 キスをしてきたのだ。

『ふ…可愛い子ね』

『あ…』

『じゃ、またね…』
 そしてゆかりお姫さまはそう囁き…
 カツカツカツ…
 と、ヒールを鳴らして、ホールの方に歩き去っていった。

『あ、あぁ…』

 わたしはそんなゆかりお姫さまのキスに、いや、その歩き去る後ろ姿のあまりのカッコ良さに…
 心を震わせ、ううん、痺れて蕩かせてしまって思わずその場にしゃがみ込んでしまった。

『あ、ぁ、な、なんて…』

 なんて素敵でカッコ良いんだ…

 わたしはこの出来事に、いいや、わたしはこのゆかりお姫さまの不意なキスに…

 カラダと心が一気に痺れ、震え、蕩けてしまい…
 ううん、心を奪われてしまったのである。

 そしてそんな想いと同時に、ズキン…と、子宮までをも疼かせてしまったのであった。

 あの時は間もなく16歳になろうという高校一年生であったのだが、実は、中学二年生の夏休みには初体験を済ませ、その当時付き合っていた三歳年上の彼氏と定期的にセックスをしていたのであるのだが…
 ある程度の快感は感じていても、まだ絶頂感というセックスの本当の快感は得てはいなかったのだ。

 いや、というよりは、彼氏がヤりたがるから仕方無くヤらせていただけであり、心から自分自身はさほどセックスへの欲望は無かった…

 だけど…

 だけど…

 今でも忘れない。

 この時、いや、この瞬間の子宮の疼きが…
 わたしの本当の性の、セックスの自我、嗜好を分からせてくれたのである。

 それは…


 あぁ、わたしは…
 
 わたしは…

 あの美しく、毅然で凛としたあのゆかりお姫さまに…

 抱かれたい、いや、愛されたい…と。


 そう…

 わたしのビアンという性嗜好が目覚めた瞬間であったのだ。




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