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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 53 青山一也という男…
 
 株式、資産運用等のスペシャリストで、資産運用課に配属されるとすぐにその株式運用や投資ファンドに優れた手腕を発揮し、瞬く間に結果を残し、その実績により転職後僅か1年で係長、課長、部長補佐へと順調に出世コースを歩む。
 そしてまた彼自身は、越前屋から前途された様な理由により保険業務に高い志しを持ち、かつ優秀な妹も就職してきた流れの影響もあり、この保険会社の当時の男尊女卑風潮への社内改革推進派の一人と認識され、それによって独裁的な力を持っていた当時の元真中常務のアンチと認定された事により、新潟支社に左遷された…
 という経緯があったそうだ。

 そしてこの履歴資料の顔写真を見る限り…
 普通の、ごく平方な、眼鏡を掛け、比較的真面目そうな感じ、いや、どちらかといえば地味な面持ちが見受け取れ、とてもそんなキレ者には感じてはこない。

 だが、先の越前屋曰く…
 社内には『青山の逆襲』と云われる程の左遷後の資産運用に関する都市伝説的な話しが存在するほどであるという。

「ふう、意外な印象だなぁ」
 私は履歴顔写真を見て、思わずそう呟く。

 すると…
「本当ですね、わたしも第一印象ではそう感じました」
 と、律子も応える。

「うん、株式運用、投資のキレ者のスペシャリストって訊いていたから、もっとこう、鋭くてシャープな感じを勝手に想像してしまっていたんだがなぁ」

「あ、はい、そうですね…
 でも、能ある鷹は爪を隠すって諺があるくらいですから、案外見た目とは比例しないのかもですね…」
 と、律子も多分、私と同じ様な感じを実感したのだろう、そう応えてきた。

「ま、そうかもだけどなぁ…」
 そう呟きながら律子の顔を見る。

 だけど、この律子なんて、あ、いや、ゆかりもそうだけど、どこから見ても理知的で、仕事の出来る、いい女にしか見えないんだがなぁ…
 と、隣に座っている律子の姿を眺めながら思ってしまう。

 今日の律子の姿は…
 おそらく新潟出張に帯同する常務秘書然とした、ややチャコールグレーの色合いのどちらかといえば地味な感じの膝丈スカートのスーツを着用し、そこから伸びる美しいストッキング脚も比較的光沢を抑えたグレー系を穿いており、そして艶消しな黒のヒールを履いていた。
 
 どことなく全体的に地味に抑えている感じではあるのだが…



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