テキストサイズ

シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 55 熱い輝きの目…

「ほう…」
 私はそんな律子のさり気ない言葉に思わず感心してしまう…
 なぜならば、その彼女の言葉が私には甘い誘惑の囁きに聞こえたから。

 そして律子は続けてきた…
「山崎のおじさまによると…」
 山崎のおじさま…
 つまり山崎専務の事である。

「真中前常務の収賄容疑での失脚、逮捕によって、社内の前常務派の面々は自分にもかなり影響があると戦々恐々としているそうなんですって…」

「ま、確かにそうだろうなぁ」

「そしてアナタ、あ、すいません、大原新常務は新しい本社からの完全なる本流、いや、本社主流の派閥からの刺客的な…」

「え、刺客って?」
 
「あ、はい、大原新常務就任は、この社内の前常務派の粛清の為に就任されてきた…と」

「おいおいマジかぁ…」
 しかも、刺客という大袈裟な…

「だからその面々は戦々恐々と怯えているそうです」
 と、律子は珍しく、少し意地悪気な微笑みを浮かべてそう云ってきた。

「ま、そうだろうなぁ」

「はい、そのタイミングでのこの新潟支社の視察ですから」

 なるほど…
 前常務派のこの新潟支社長はかなり戦々恐々、いや、怯えを通り越して絶望しているかもしれない。

「ですからそこを逆手に利用したら、こちら側…
 つまりは大原常務側に…」

「あ、そうか…」

「簡単にこちら側に落ちちゃいますよね?」
 と、律子は目を光らせて云ってくる。

 こちら側に…
 それはつまりは簡単に手懐けられるという事か。

「…………」
 すると律子は意味あり気な顔を向けてきた。

「あっ」
 そして私はそんな律子の目と顔を見て、ハッとする。

 これは甘い誘惑ではなくて…

 えっ…

 そうなのか…

 あるひとつの想いが浮かんできたのだ。

「…………」
 鋭く勘の良い律子は、そんな私の表情を読んだのだろう…
 黙って頷く。

 そしてその律子の目が、熱く輝いている感じがする…

「そ、そうか…」
 そしてその律子の目の熱い輝きの意味が分かった、いや、伝わってきた私は、そんな感嘆な想いからの言葉を呟いた。

 そうか…

 そうなのか…



ストーリーメニュー

TOPTOPへ