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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 56 律子の熱い昂ぶり

「そ、そうか…」
 そんな律子の想いに気付きそう呟く。

「はいそうですよ…
 そうなんですよ、そしてそれは上手くいくはずですし、大原常務の新たな手駒がまた一つ増えると思います」

 その律子の想い…
 それは戦々恐々と怯えている前常務派の新潟支社長を手懐けてしまえ。

 簡単にいえはそういう事であり、いや、そういう事なのだが…

『それは上手くいくはずですし…』
 何に対して上手くいく?
 つまりそれは山崎専務に内緒、秘密が上手くいくという意味…


『新たな手駒がまた一つ増える…』
 また一つ?
 つまりそれは今回のターゲットである青山という人材確保だけではなく、もう一人の新潟支社長という人材をも確保する意味…

 そしてその事に対して…
『こちら側に簡単に落ちる』
 と云ってきた。

 こちら側…
 それは山崎専務側ではなくて…
 私側…
 つまりは私、大原新常務側という事。

『手駒が…』
 それは私にとっての優秀な人材という武器、戦力の意味…
 つまり…
「そ、そういうことか?」
 私は浮かんだ想いに思わず確認を問う。

「はいそうですわ…」
 それはつまり…
 私の下剋上という可能性の野心の為の必要な手駒、人材、武器、戦力という意味であり…

 そしてもう一つ…
 その野心に必要な新たな
 『大原新常務派閥』という将来必ず必要となる大きな人柱の礎という意味。

「仮に新潟支社長を落としても山崎のおじさまにはバレないと…
 いいえ表面上は現松本副社長派閥の為と言い訳できますから…」
 そうシレっと云ってきた。

「あ、そ、そうか…」

「はい、そうですわ」
 そしてそう微笑みながら応えてくる律子の目を見て…
 ある確信をしたのだ。

 そのある確信とは…

 実は私よりも律子の方が、いや、間違いなく律子の方が…
 この『下剋上という野心』を…

 私より強く心に抱き、たぎらせ、昂ぶらせているんじゃないのか…と。

 いいや、間違いない…
 間違いなく、律子自身が熱く昂ぶらせている。

 またそれは、律子自身の血脈による…
『経営の神様』と云われた存在である祖父の熱い血脈のDNAが彼女の心を熱くたぎらせ、昂ぶらせているのだと。

 もしかしたら私は律子に選ばれたのでは無く、私自身も律子の手駒の一人に過ぎないのかもしれない…

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