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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 84 秘書 松下律子(12)

「ただし、食事だけですからね」
 わたしはそう釘を刺す。

「あ、はい、分かってますからぁ」
 一瞬にして上機嫌になった青山さんは、とても分かっている様な感じではない返事をしてくる。

「食事だけですからねっ」
 だからわたしは敢えて、もう一度そう繰り返し、念を押す。

 そして、これが後々に効く筈だから…

 それに今夜はなにがなんでも、彼、大原浩一常務と過ごす、過ごしたいのだから…
 こんなチャラい彼とはいつまでも付き合ってはいられない。

 あくまでも彼が戻ってくるまでの繋ぎなのだから…

「はい、もちろんですよ、分かってますからぁ…
 もう松下さんと食事か出来るだけで最高なんですからぁ」
 と、また再び、調子よくなってきた。

「もう、ホント、調子の良い人ね」
 でも、その調子良さは、なぜかわたしには心地よいのだ…
 そう不思議と違和感や嫌悪感、不快感は湧いてはこないのだ。

 こんな軽々しいのになぜか…

「いやぁ、良かったですよ、いちおう自分もそれなりにオシャレしてきたから」
 そして彼はそう言ってくる。

「え?」

「だって松下さん、こんなにオシャレで素敵なんですから…
 いちおうバランスもそれなりに考えて…」
 そう言ってくる青山さんは、淡いブルー系の薄手のサマーニットにベージュのチノパンを履き、いちおうこのレストランはドレスコードはないのだが、薄手のジャケットを羽織っていた。

 そんな彼の姿からは、爽やかで清潔感を感じられてはくる…

「そんな、オシャレって…」

 かたやわたしは藍色のノースリーブのゆったりとしたワンピースに、薄手の碧色のショールを肩に掛けているだけの、シャワー上りのリラックスした感じであるのだが…

「さっきまでの秘書としての凛とした堅い感じから一転、リラックスした雰囲気のファッションで、そしてその薄化粧がまた、堪らない感じですよぉ…」
 と、また、調子に乗った軽々しい感じで言ってきたのだ。

「もぉ、ホント調子のいい…」

「いや、マジ、ホントだから、本当に素敵だなぁって…」
 わたしがそう返すとすかさずそんな感じで応えてくる。

「でも、どんなに褒め殺しにしてきたって、どんなに調子の良い事を言ってきたって…
 絶対にお食事だけですからねっ」

 わたしは敢えて念を押す…




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