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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

83 秘書 松下律子(11)

 それに…
 彼、青山一也に対して男としての興味も少し湧いたから。

 昔…
 そうあれは大学時代のモデル活動を諦めて就職したファンド系ビジネスコンサル会社の社長が、わたしにとって初めて燃える様な恋愛をした男であった。

 結果的にはその大恋愛は成就せず、いや、後々までストーキングに近い紆余曲折にこじれた恋愛になってしまったのだが…
 その元彼も株式ファンド系に突出した優秀なトレーダーであったのだ。

 だからそをな過去と似た様な存在があったから…
 そしてこの青山一也というこの男に対してそんな過去の男と同じ様なニオイを感じ、少しだけ興味が湧いてしまったのかもしれない。

 なぜならその元彼の事を、決して嫌いになって別れた訳ではなかったから…
 それにその彼のストーキング的な執拗なアプローチは一度別れてからの再会の末の行動でもあったから、わたしはその元彼に対しての嫌悪的な思いはほぼなかったのだ。

 そして逆に、その時期に大原浩一常務、当時はまだ部長だった彼と出会ったから、彼に甘え、心が救われ、現在に至るという過程にあったのである…

 そんな過去の流れもあって、わたしは少しだけこの青山一也という男に、いや、本当にほんの少しだけ興味を感じたといえる。

 だからこのストーキング的、ストーカー的な話しは決して本気ではなく、戯言的な冗談といえたのだが…

「……………」
 どうやら彼にはキツいひと言みたいに捉えた様であった。

 だから…
 少しだけかわいそうだし、今後の、これからの、本社での絡み等やこの先々の色々な事を考えて…

「ま、いいわ、冗談よ、冗談…
 仕方ないから食事に付き合わせてあげるわよ」
 と、助け舟を出してあげる事にしたのだ。

「え、ま、マジっすか?」
 すると彼は顔を上げ…

「うん、マジ、仕方ないからさ…
 アナタ、青山さんの努力を認めてあげるわよ」
 わたしは…
『しょうがないなぁ…』みたいな顔をしながらそう言う。

「うわっ、やったぁ」
 と、パァっと一気に明るい顔に変わり、喜びの声を上げてきた。

「ほら、これから本社でお世話になる訳だしぃ、ま、お近付きのしるしとしてね」

「はい、そうですよね」
 一気に彼のテンションが上がったみたい。

「ただし、食事だけですからね」
 
 わたしは釘を刺す…



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