テキストサイズ

シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 39 8月7日木曜日午前7時10分


 ブー、ブー、ブー…

 朝方、蒼井美冴さんと着替えの為に別れ、各々の自宅に戻った。
 そしてシャワーを浴びて出勤の準備をしている時に、佐々木ゆかり部長から着信が入った。

 なんだろうか…

「はい、もしもし、ゆかり部長おはようございます」
「あっ、健太、おはよう」
「どうかしましたか…」

 するとゆかり部長は、今日、朝イチで異動辞令が発表され、そのままの流れで急きょ異動辞令を出されたメンバーが
『仮、開発準備室』のあるコールセンター部に出勤してくるから案内役をしてほしいのだ…
 と、話してきたのである。

 昨日、本社人事部に提出したセレクトメンバーの約8割は、俺と同様に事前に、簡単な内々示の異動辞令を受けている筈なのだが、残りの2割のメンバーは今朝に辞令を受けてのそのままの直の流れでの異動出勤になるのだというのだ。

 本来ならば今日木曜日午前に異動辞令が発表され、明日の金曜日からの異動出勤になるのが我が社の通例なのであるが、土曜日からお盆休みの9連休に入るので、なんとしてもその長期連休の前に
『新規事業プロジェクト』をスタートさせたい…
 と、山崎専務の意向があるらしいのだという。

 なるほど、どんどんと意欲的に進める、山崎専務らしい考え方だ…
 俺はその時、そう思った。

「ああ、はい、わかりました」

「多分、初日だから、皆、比較的早くに出勤してくると思うのよね…」
 健太、コールセンター部に自宅が近いんだから少し早めに出勤して案内役してよ…
 佐々木ゆかり部長がそう言ってきたのだ。

「はい、喜んでっ」
「まったく、朝から調子いいわね」
 佐々木ゆかり部長、ゆかり先輩の命令は俺にとって絶対なのである、そしてその命令される事が嬉しい事なのである。

「でも、ありがとう、助かるわ…」

「はい、任せてください…」
 このゆかり先輩の言葉が、俺にとっての至福の想いなのだ。

 ただ…

 そう、彼女…

 蒼井美冴…
 
 彼女という新たな存在感を知ってしまったせいなのか、俺のこの至福の昂ぶりは、やや半減してきていたのである。

 どうやら彼女に対する想いは本気のようだ…
 そう自覚していた。

 そして俺は早めに出勤をする。

 うちの定時は8時30分、だが俺は7時40分には出勤をした…






ストーリーメニュー

TOPTOPへ