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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 176 その二人…

 わたし達はチェックアウトの為にエレベーターでフロントロビーへと降りた。

「あ、え?」
 すると、エレベーターエントランス前に…
 青山一也と昨夜のおみやげ秘書の竹下雪恵の二人が待ち構えていたのだ。

「あ、大原常務、おはようございます」
 と、その二人は声を揃え、平身低頭で挨拶をしてくる。

「お、あ、う、うん、おはよう、え、どうしたんだ?」
 彼、大原常務は、ここに、それも朝のこの時間に居る事自体があり得ない二人に不意に朝の挨拶をされ、その二人の姿を確認し、そう戸惑いの声を漏らす。

「あ、松下さん、おはようございます」
 わたしもこの二人の不意な出現と、その朝の挨拶に…
「え、あ、な、なんで?」
 と、驚きと戸惑いの声を漏らしてしまう。
 そしてまた、そんな戸惑いの他にもこの二人の違和感を感じてもいた。

 その違和感とは…
 それは二人の服装が、昨夜の別れ際と同じであったから。

 青山一也は昨夜、このホテルの有名なイタリアンレストランの前でわたしを待ち伏せしていた時のままのカジュアルな装いを、いや、まるっきり昨夜と同じであり…
 かたや彼女、竹下雪恵さんもどう見ても昨夜と同じスーツにブラウス、そしてバッグ、ヒールと見受けられる。

 そしてつまりそれは…
 昨夜の二人は、あの後一緒に一夜を共に過ごしたのだろうとわたしには想像、いや、多分、間違いはないであろう。

 だって昨夜、青山一也は彼女とはいい関係の時期があったみたいな事を匂わせていたから…

「うん、ところで何か用があるんだろう?」
 おそらく、わたしと同じ事を想像しているであろう彼、大原常務が、その二人に問いかけた。

 それは、不意の待ち伏せに対しての詰問的な声音ではなく、ある程度、この二人の待ち伏せの意味を予想したかの様な優しい問いかけの声音といえ…
 その辺りからも彼の優しく、懐の大きさも伺え、感じられてくる。

 そしてその二人もそんな彼の懐の大きさを、昨夜感じとったのであろう…
 の、この待ち伏せなのではないか?
 
 わたしはその二人の姿を見ながら、そう考えていた…



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