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　179　戸惑いの色

「え、あ、さ、昨夜の事は、そ、そのぉ、長岡支社長には、できれば、な、ナイショにしていただけたら…」
　
「え、なんの事かな？」
　なんと、彼は、大原常務は、その彼女
、竹下雪恵さんにそう応えたのである。

「えっ？」
　その彼のその応えに、彼女は驚きの声を漏らし、そして…

「あ、いや、だから、昨夜の大原常務さんに対してのわたしの失礼な非礼のことを…」
　彼女は自分の言っている事を、大原常務が理解していないみたいに捉えたのだろう…
　慌ててまた言い直してきた。

　すると…
「え、失礼な非礼なんて…
　昨夜はキミが丁寧に優しく、新潟市内の夜景の案内をしてくれただけじゃないか…」
　と、穏やかに、そしてにこやかな微笑みを浮かべ、優しい口調でそう彼は云う。

「え、あ…いや、そ、それは…そんなぁ…」
　だが、彼女は、竹下雪恵さんは、過去にそんな男の、いや、上司からの優しい言葉や思いやり等を受けた事がないみたいで…
　彼、大原常務の懐の器の大きな優しい思いやりの言葉の意味を理解できない様であり、そして戸惑いと焦燥の色を浮かべてくる。

「いやぁ、キレイな夜景だったよ…」
　そして大原常務は今度はそう言いながらわたしの顔を見てくる。

　それは、その彼の顔、いや、目は…
　昨夜、わたしが青山一也からの『おみやげ接待』の話しを聞いて、そしてホテルに戻ってきた時に少しヤキモチを焼き、その嫉妬心から少しイジメ、からかった事に対する言い訳的な目といえた。

「え、あ、そ、それは…」
　だが彼女はまだ、戸惑いの色が消えてはいなかったのだが…

「あ、大原常務、その優しいお言葉ありがとうございます…」
　すると隣から、青山一也がそうお礼を述べてきたのだ。