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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 13 幼稚な理由

 そう…
 わたしは本当は、この心の揺らぎの原因、大元の根元が『嫉妬心』つまりはただ単純なる『ヤキモチ』であるという事は分かっていたのである。

 だが…
 だけど…

 美冴さんの時にその嫉妬心という感情を、今までの人生の中で初めて感じ、自覚した感情ではあるのだが…
 まだ、顔姿をも見た事がない松下律子という彼女に対して抱いてしまっているというこの自分の気持ちを認めたくはなかったのだ。

 そしてまたもう一つ…
 この嫉妬心の大元の想いが湧いた理由も本当は分かっている。
 
 だって…
 なぜなら…
 その理由が本当に幼くて、幼稚な感情だから。

 だけど…
 今までの、この30年という人生の中で、やはり嫉妬心という感情と同じくらいに初めて感じ持った想い、心の揺れ、揺らぎであるから。

 そう、それは、わたしはただ単純に彼女、松下律子さんが…
 羨ましい、うらやましいのである。

 だって、それは…
 常務専属秘書として、正々堂々と彼、大原浩一という存在と朝からずうっと、しかも秘書なんだから、誰かの視線等あまり気にもせずに一緒に過ごせるからだ。

 思い返せば、彼と男と女の関係になった瞬間から…
 それは、その関係は自ら望んた関係であるからそれについては最高の喜び、悦びであるのだが、その関係が更に親密に昂ぶれば昂ぶり高まるほどに、周りの目、視線をより必要以上に意識をし始めてしまっていた。

 上司と部下…
 それも不倫の関係ではないから正々堂々と本来ならば出来なくはなかったのだが…
 偶然なのだが、わたし達二人の関係の親密さが増し、昂ぶり、高まるのとほぼ同時に、お互いが異例といえる出世の道が拓いてきてしまったのだ。

 確かにその出世についても、いや、特にわたしの出世は自分の業務業績の成績の向上による結果によるモノが強いのではあるのだが…
 異例のスピード出世が故に、彼の力、影響力に依る出世であろうという世間の目もあり、いや、それはサラリーマン世界では至極当然に思われても不思議ではなく、だからこそ、より、彼との関係がバレてはならないという警戒心が更により強くなっていった。

 そしてその警戒心が故に、わたし達の二人の関係は、逢瀬といえる様な関係に近くなり…
 世間の目を気にするが故に、夜、ホテルでの逢瀬と化していったのだ。

 

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