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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 118 視線(10)

 その松下律子秘書の視線は…
 まるでわたしを観察しているかのような目。

 じゃ何の観察?

 それは…
 おそらくはさっきから揺れ動いているわたしの心の揺らぎ、動揺を観察しているのだと思われる。

 つまりわたしの疑惑の疑問…
 それは彼とこの松下秘書との関係への疑惑に揺れるわたしの反応の様子を観察しているのではないのか、と。

 じゃなければ、今日、今の、この新潟支社からの人事異動の説明の呼び出しなんて、本来ならば説明はいらないからである…
 常務預かりの、ましてや更に上である商社本社の山崎専務の承諾、承認を得ている人事異動案件なんて、いくらわたしの下に異動しようとも簡単な異動辞令、もしくは電話での簡単な説明だけで済むはずなのだから。

 それをわざわざこうして呼び出し、対面にて説明をしてくる…
 しかも、こんな簡単な説明をだ。

 つまりはこの呼び出しでの対面の説明の場の本来の目的、意味は別にあるのだと思われる…

 そしてこの松下秘書の時折見せてくる上からの、そう、まるで勝ち誇ったかの様なこの視線…

 それは…
 この松下秘書がわたしという存在を求めてきた場という意味であろうと。

 つまり、この場は…
 松下秘書が求めてきたわたしという存在との、いや、大原常務ではなく、大原浩一というオトコのオンナであるわたしとの対峙の場なのだと。

 そしてつまりそれはもう…

 ほぼ、いや、間違いなく彼、大原浩一というオトコが彼女に陥落したという絶望的な現状の現れ…

 彼、大原浩一は、もうわたしのモノ、オトコなのよ…
 という勝利宣言、宣告の意味であるこの対峙の場なのだと。

 わたしはこの松下秘書からの視線を感じ、そう読み取り…

 そして彼女の若さ、美しさ、艶めくストッキング脚の魅惑さに…

 絶望する…

 彼を…

 大原浩一を…

 獲られてしまったかもしれない…

 いや、もう…

 獲られてしまったであろう…



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