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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 120 視線(12)

 あ、あのシャネルの残り香の変化…

 まさか…


 あの先に、脳裏に浮かんだシャネルの残り香のカラクリの疑問が間違いではなければ…
 なんとなく、全部の疑惑が合致するかもしれない。

 銀座のお姉さん=松下律子秘書

 このあり得ない荒唐無稽な疑惑が、山崎専務という存在感を加味すると…

 リアルに現実味が増してくる。

 そもそもが彼の常務就任は、昨日、今日の思い付きではあり得ない…
 それまでの十分な根回し、持ち株等買収の資金問題等々な用意周到の準備をしなければ、しかも、それ等の準備は一朝一夕ではできない筈なのである、そしてそれは当然、それ相当の準備期間が必要不可欠なのだ。

 ただ、常務に就任した本人が全く知らなかっただけ…
 正に彼曰くの操り人形的な傀儡の存在といえるから。

 だが、おそらくは、この常務就任の直後に…
 きっとこの僅かな四日間の間に、わたしが知らないだけで山崎専務から大きな企ての一端を、いや、全てを、いいや、壮大な企ての全てを、そしてその中の自分の重要な存在感を訊いたのであろう。

 だからこその、この前わたしが感じた彼の心の中の、ナニかの微妙な変化なのであろう…

 そしてそれにおそらくは…

 この松下律子秘書という女、オンナが、大きく関わっているのではなかろうか?…
 と、彼の様子と彼女のあの勝ち誇ったかの様な自信満々な目、視線を感じてそう思い、考え、感じ、逡巡する。

 それと同時に、ザワザワとした絶望感、いや…
 焦燥感が心を騒つかせてきたのだ。

 え、焦燥感て?…

 確実に彼を獲られたと実感したのに、悲しみの伴う様な絶望感ではなくて…

 焦燥感って?

 いったい?

 心の中の逡巡が、大きく、ぐるぐると揺れ、渦巻き、上下してくる…

 なぜか不思議と…

 それほどの悲しみが、絶望感が、湧いてはきていないのだ…

 彼を、愛しいオトコである大原浩一を獲られた筈なのに、そこまでの強く、激しい悲しみ、哀しみが湧いてこない…

 いくらそのウラに黒い企て、陰謀があろうだろうと想像、いや、確信ができているとしても…

 なぜか…

 なぜ?



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