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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 129 誘い(5)

『ええ、是非ともぉ、大原常務さんと一緒にぃ、参加して欲しいんですよぉ…』

 そんな越前屋さんからの誘いにわたしの本当の本音は…
 例え業務である『新プロジェクト企画』の決起集会だとしても、わたし自身はもちろん、大原常務にだって参加しては欲しくはない。

 だってそれは、いや、明日のその決起集会とは、この佐々木ゆかり室長が中心の集会であり酒宴だから…
 そして彼女は『本社コールセンター部』部長であり『新プロジェクト企画』企画準備室室長であるのだ。

 そんな輝かしい立場である彼女に、まだまだぐらぐらと揺らぎ、揺れている彼に関わらせたくはない…
 という本音の思いがある。

 だからこそ迷っていた…
 だって越前屋さんの誘い文句は至極最もだから。

 それは本社の本部長であり、生保会社では傀儡的立場とはいえ正式で、正当な常務取締役という役員である彼の立場であるならば…
 それに参加するのは当然といえるから。

 だから…
 その参加を断るならば、正式な理由が必要となるのは必然といえる。

 だが、しかし、それについては秘書であるわたし次第といえ…
 それは、彼の全てのスケジュール管理を担っているわたしの考え、判断、思い、想い、気持ち次第…
 つまりは行かせたくないならば、わたしがウソを、嘘のスケジュールをでっち上げれば済む事なのである。

 そしてわたしは最初に越前屋さんに誘われて直ぐに、嘘のスケジュールを理由に断ろうと思っていた…
 それはもちろん、彼と佐々木室長をしばらくは直接関わらせたくないという理由から。

 なぜなら公私の公は、秘書としてのわたしという存在を必ず通さねばならないから問題はないのだが…
 公私の私は、彼の覚悟の為にももう少し時間を空けたかったから。

 そんな理由から、本当は明日の夕方以降のスケジュールは空いてはいるのだが、断ろう…
 と、そう考えていた。

 だが…
『例え一時間でも空いていたらぁ、是非ともぉ…』
 そんな続けての越前屋さんの誘いに、少しだけスケジュールのチェックをするフリをする為に、視線を手元の手帳に移す瞬間…

 あっ…

 わたしの目に一瞬だが、ハッキリと、佐々木ゆかり室長の大きく揺らいでいる目が、視線が見えたのである。

 あっ、えっ、彼女はイヤがっているのか?…

 

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