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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 130 誘い(6)

 あっ、えっ、彼女はイヤがっているのか?
 彼に、明日の集会には来てもらいたくない、ということなのだろうか?…
 瞬間にそう逡巡した。

 そうか、そう、そうなんだわ、わたしとの疑惑に対しての想いの払拭が出来るまでは例え彼とでも、ましてやわたしも参加なんて…
 絶対に関わりたくはないはずなんだわ。

 だって、だって、わたしだったらそうだから…

 その一瞬、この瞬間に…
 わたしの心の中のオンナという、いや、メスのオスを求める想い、いいや、メスの本能が囁いてきたのである。

 明日でキッチリと決着を決めろ…と。
 完全に自分に陥とし、オトコにしてしまえ…と。
 彼女と直接対峙をし、奪って、いや、奪い獲ってしまえ…と。

 心の中のもう一人の、いや、別な、初めての感覚であるメスの本能に支配された存在が…
 目を醒まし、顕れ、そう囁いてきた。

「あ、え…と」
 わたしはその心の衝動の命ずるままに、スケジュール手帳から顔を上げ…

「あ、え、明日は、午後七時以降のスケジュールはありません…
 ですから大原常務の参加は可能ですね…」
 と、そう言ったのである。

「ええっ、そうなんですかぁっ、じゃあっ…」
 と、越前屋さんはハイテンションな声を出し、わたしを見つめ、そして彼を見る。

「あ、はい、参加できますね、あ、大原常務がよろしければ…」
 と、いちおう彼に有無を問う。

「あ、うむ、うん、喜んで参加させてもらおうかな」

 まるで彼は…
 対面にいる佐々木ゆかりや傍らのわたし等々の苦悩の逡巡など想像だにせず、
いや、おそらくは参加したかったのであろう笑みを浮かべて越前屋さんにそう答える。

「うわっ、やったぁっ、あっ、じゃぁ、お姉さ、あ、松下さんも是非参加でっ」
 そう、越前屋さんは彼に向かいそう言い…

「うむ、そうだな、松下くんも参加しなさい」
 と、今までのこの彼女とわたし、あと蒼井さんを含めての四人のこの対峙の緊張感等々をすっかり忘れてしまったかの様に、そう言ってきたのである。

「…え、あ、はい、常務がそう仰せならば参加させてもらいます…」
 そしてわたしはわざとそうへりくだった言い方をして返事を応えた。

 その瞬間…
 わたしは見逃さなかったのだ。

 佐々木ゆかりの再びの…

 絶望的な一瞬の…

 その翳りの表情を…


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