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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 135 昂ぶりの余韻(5)

 限りなく薄いナイロン繊維のストッキングは穿く事によりピンと張り詰め、美しい光沢と艶を放ち…
 脚をより美しく、妖艶で魅惑な存在へと装っていく。

 そんなストッキングは…
 愛するこの大原浩一という男のフェチズムという性癖嗜好により魅了され、己の性衝動が刺激され、昂ぶり、いや、彼にとっての女性の象徴的存在といえる。

 そしてそんな彼のフェチズムという性癖嗜好を理解し、認め、愛され、より昂ぶり、より好まれ、より求められたい…
 と、このストッキングという存在に過度といえるほどに意識を高め、いや、わたし自身が彼の愛するストッキングになりたい位に思いを込めているのだ。

 だがそんな彼の愛するストッキングは、美しければ美しいほどに…
 限りなく薄くて、脆い。

 そしてそのストッキングという存在は、ほころび、破れてしまうとその価値観は…
 瞬く間にゼロに近くなってしまう。

 そんなわたしの想いの象徴であるストッキングが…
 穿いているストッキングが、破け、伝線というスジを膝頭から太腿へかけて走り抜けさせてしまったのだ。

 そしてそのストッキングの価値観をゼロにしてしまう一本の伝線のスジを見た瞬間に…
 わたしの中の心の奥深くの中に隠れていた秘密の扉が開き、隠していたメスの本能に支配されている、いや、淫靡なメスの本能そのものの象徴といえる、もう一人のわたしという未知の存在が顔を出してきたのである。

 そう、嫉妬心という未知の心の衝撃により顕れたもう一人のわたしが…
 まるでこのストッキング上に走り抜けていった電流の様なその伝線によって目覚め、目醒め…
 普段から周囲に、より強い意識のバリケードを張り巡らせ、心の揺らぎを極力押さえ、抑え…
 常に過剰なくらいに自意識を張り詰めさせているこの松下律子という本来の存在を壊してきたのである。

 いや壊してきたのではなくて、本来のわたしという存在感を押し出し、顔を出して…
 つまり心の奥深くに隠れていた未知のもう一人のわたしという存在に乗っ取られてしまったといえるのだ。

 いいや、これが本来の、本当のわたしが顔を出したのかもしれない…

 その未知のわたしの心が…

 このオトコを…

 この男、大原浩一を欲して…

 欲しくて…

 ヤリたくて…

 彼に跨り、唇を貪っていく…



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