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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 179 ナニかの…

 だけど本当にわたしが怖い、怖かったのは、その心のナニかが覚醒寸前に至るまでの強く、激しい快感、絶頂感により感じた…

 ナニかが壊れる…

 という感覚、昂ぶり、感情なのであった。

 そしてその想いは、さっきのわたし自身の象徴でもある、いや、そう意識しているストッキングという存在の、破けるという伝線によって感じた心の衝撃からにも…
 壊れる、という感情が走ったのである。


 そう、ナニかが…
 わたしというナニかが…
 心の奥深くに隠れていたナニかが…
 いや、わたしは、その新たなもう一人のわたし自身のナニかという存在感を…

 本当は知っているのかもしれない。

 ただ、そのナニかという存在感をコトバに表せられない、表現ができないだけ…
 そして本当は、その正体を知りたくはないだけ…
 と、心が囁いてきているのだ。

 だから怖いのだ…
 いや、きっとそのナニかという正体は、今のわたしという存在感を完全に否定し、壊してしまうかもしれないのだと、本能的に、無意識に、心の奥深くから囁いてくるのである。

 だから怖いのだ…

 そしてもしも、今夜彼と、この流れの延長でまた一夜を過ごし、抱かれ、愛されてしまったならば、その快感、絶頂感により、きっとそのナニかという存在感が、わたしを壊して顕れてしまうのがわかるから…
 今夜は避け、逃げ、お暇という距離を置いたのであった。

 だが、しかし…
「では、お疲れ様でした、失礼します」
 そう彼、大原常務と入江人事部長に挨拶をし、別れ、秘書課に顔を出し、日報的な簡単な報告書を作成していると…
 今日一日の流れからさっきまでの佐々木ゆかり達との対峙の場面、シーン、そしてそのあとの彼との激しいセックスの快感と絶頂感が甦り、更に今度は余韻的な快感が子宮の奥深くからリアルに疼き始めてきてしまっていた。

 その子宮の疼きに心は更に戸惑ってしまう…

 すると…
「あ、松下さん、今夜この後時間あるかしら?」
 と、不意に、田中恵子秘書課課長が声を掛けてきたのだ。

「え、じ、時間て?」
 思わず聞き返してしまう。

「あ、いや、ほら、私と二人だけどね、まぁ、つまりは簡単な歓迎会的に食事でもってね…」
 そう田中課長は誘ってきた。

「あ、え…」
 わたしはその突然の誘いに戸惑ってしまう。



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