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シャイニーストッキング

第15章 もつれるストッキング4    律子とゆかり

 189 帰りのタクシー(1)

「ふぅぅー……」
「ふうぅ…」
「はぁぁー…」

 わたしと蒼井美冴、越前屋朋美の三人は…
 常務室を出て直ぐに生保本社前から『新プロジェクト準備室』のある西新宿に帰る為のタクシーに乗り、そして座った途端に三人同時にそんなため息を漏らしたのだ。
 
「え、な、なに、二人ともそんなため息ついてぇ?」
 と、わたしは隣に座っている美冴さんと、前の助手席の越前屋さんにそう問うた。

「えっ、あ、う、うん…」
 すると美冴さんはそんな感じで口ごもり、そして横を向きわたしの目を見つめてくる…
 そしてその目は、おそらくはわたしのため息の理由とほぼ同じであろうの色の目を向けてきたのだ。

 わたしのため息の理由とほぼ同じ…
 それは、さっきの常務室での報告の場で受け、見て、感じた思い、そして、その様々な想いと思いからの心の揺れ、揺らぎを意味しているのだと思われる。

 つまりは、わたしと美冴さんの同じ想いであろう…
 あの松下律子という秘書の存在感の魅惑さと、彼、大原浩一常務の不惑さであった。

 いや、松下秘書のはるかに予想を上回る美しさと妖艶さと、魅惑溢れる魅力…
 そしてこの美冴さんをも上回る美しさと魅惑さのあのストッキング脚の美しさ。

 これは先の禁断のビアンという関係により愛し合い、伝わってきた美冴さんのストッキングへの愛情とこだわりの想いからの同じ思いであるに違いなく、そしてそれは…
 そのストッキング脚の魅惑さ故のストッキングフェチである彼の不惑さをより理解できてしまうという事実を物語り、そしてさっきの彼の笑える程に動揺し、狼狽えといえる様相が、そんなわたしと美冴さんとの想いと思い、考え、予想の確かさを露してるといえたのである。

「ふぅ、本当に…」
 越前屋さんが乗っているせいであろう…
 美冴さんはまたそうため息交じりで口を開く。

 本当に…
 その美冴さんの呟き、それは、さっきの彼の様相への呆れた意味を表す言葉。

 そしてわたしと彼との秘密の関係を唯一知っているが故からの言葉といえ、その美冴さんの短い『本当に…』という単語のウラには…
『本当にオトコって、ストッキングフェチのオトコって…
 脚が、ストッキング脚が魅惑的だと見境ないんだから...』
 的な、わたしの想いと同じ様な呆れ気味な意味を含んでいると感じられる

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