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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 29 逃げられない…

「ふぅ……」

 不意に、さっきの美冴のコトバが…
『まったく…』
 私に対しての呆れ、蔑み、落胆のコトバ。

『あんな秘書のオンナになんかに渡すんだったらさぁ…』
 律子との不貞の関係の確信の意味。

『そうよ…あの夜に、アナタをゆかりさんから盗っちゃえば、奪っちゃえばよかったのよ…』
 そしこれが、美冴の自律神経の露呈の慟哭。

 これらの素因…
 つまり自律神経の衝動の原因の全ては、私にある。

 私の覚悟の無さの優柔不断な態度が、ゆかりの疑惑を確定させ、美冴の不惑さを生み、この自律神経の暴走を再び誘発してしまった…
 そう、全ての原因と責任は全部私にある。

 自律神経の暴走のスイッチが入り、淫らな昂ぶりに揺らぎ、不惑の想いに戸惑いの目を向けている美冴の衝動を鎮めるのは、いや、鎮めなくてはならない責任が…
 この私にあるのだ。

「そうだよな…」
 そしてそんな自責の念を思い巡らせている反面…
 美冴特有の魅惑さからストッキングフェチという昂ぶりに魅了され、その妖しい魅力の誘惑に魅せられて、触れている指先を離せないでいる…
 そんな矛盾な性癖の衝動に逆らえないでいる。

「そうだよな…こうなったらさ………だよな…」

 そんな自分の矛盾の想いを否定できず…
 いいや違う…
 この美冴の魅力に魅了されているこのフェチという性癖嗜好の昂ぶりと…
 不惑に揺れ、そしてその押さえきれない昂ぶりの衝動から妖しく濡れた美冴の目の艶が…
 私のオトコ、いや、オスの本能の衝動のスイッチを押そうと心を激しく騒つかせてくる。

 そして…
『そんな時は、とことんヤるしかないんだよ』
『いつでもリハビリに付き合うから…』

 というあの朝に美冴に云ったコトバを…
 そう、あれは、ゆかりに対して内心抱いてしまった罪悪感からの、自分自身に対しての言い訳のコトバ。

 そのコトバが、また、不意に、再び蘇ってきた…

 そう、いいわけのコトバ…

 そして今…
 今度は大原浩一としての、オトコとしての、開き直る為の…
 いいわけのコトバ。
 
 そしてそれは、フェチの性癖衝動を誤魔化す為の…
 いいわけのコトバ。

 あとひとつ…
 美冴を鎮める責任感からの…
 いいわけのコトバ。

 もう抗えない……
 そして…
 逃げることは…許されない…………




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