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シャイニーストッキング

第16章 もつれるストッキング5  美冴

 116 愛してる…(7)

『わたしのストッキングがいちばん愛している……』
 それは…
 わたしの自尊心を高まらせ、昂ぶらせてくる言葉。

 だってストッキングはわたし自身の象徴であり…
 プライドだから…
 だから…
 わたしがいちばんじゃなくてはダメ、許せない。

 そして、それが、わたしの心の最後の砦…
 だからこそ、こうして、ギリギリ自分を取り戻せられた。

 ゆかりさんや、松下秘書に対して、唯一、勝るわたしの魅力…
 それが、このストッキングの魅惑だから。
 だからこそ、大原浩一にとっての一番でなくてはダメであり…
 一番でありたい。


「そう、これがね……」
 わたしは、緩んだ彼の手から、ストッキングを穿いている右脚を戻し、膝立てて…
「ふ……いいのよ、それで……」
 彼を見つめ、そう、囁く。

「あ…い、いや……」
「それでいいのよ……」
「え…」

 もう抗えられるのは、今しかない…
 また、再び、触れられ、抱きしめられでもしたら…
 わたしの心は、完全に、ぐちゃぐちゃに流れ、融けて消えてしまう…
 いや、彼の心の中に混ざりたい。

 だから、わたしは…
「いいのよ、それで……」
 もう一度、心を奮い立たせ、言い切った。

「それでいいのよ…
 わたしのストッキングがいちばんでさ……」
「え……」
「本当はわたしのストッキングを愛してるんだって……それでいいのよ………」

 聡明の彼には、この言葉の意味は分かっているはず…
「あ…え……」
 そしてこれが彼の、いや、オトコの…
 ううん…
 大原浩一常務という存在たる所以のズルさ。

 でも…
「それでいいのよ……」
 そう、それでいい。
 
 それが…
 このわたしの『最悪』で『ひどい』夜を、明けさせてくれ、また再び、明日を迎えられる朝へと通じるのだから。

 そしてまた…
 彼、大原浩一自身を巡る、これからの先を守るという事にも通じるはずなのだから。

「アナタ、大原常務さんはさぁ…
 わたしのストッキングを愛しているのよね」

「あ、いや、それは……………」
 だが、目を揺るがせるが…
 彼は、否定はしない。

 だって、分かっているから…

 そしてそれが…本当の愛だということを……


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