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　97　理解

　改めて自分はいかに普通ではない、欠陥の女なんだ…
　と、つくづく思い知ったのである。

「きっと…」
　すると美冴さんが口を開く。

「きっと、彼に、大原本部長に大切に…
　大切に愛されているからそう変わってきているのよ…」
　わたしが握っている手をギュッと握り返し、そしてわたしの目を見つめながらそう話してきた。

「えっ…」
　その美冴さんの目に再びドキッとしてしまう。
　その目に吸い込まれそうである。

「彼に、本部長に、本当に大切に、愛されているのかな…
　と、わたしも見ていて最近そう感じていたわ…」

「えっ…」
　そんな彼女の言葉に心が震えてしまう。
　
　やはり、やはり、美冴さんはわたしをよく見ていてくれていた…

　よく理解してくれている…

「『鉄の女』と云われていたような、あの頃にあったなんとなくの堅さが、無くなったもの…」

　やはりよく見ていてくれている…

　その言葉は、この前に笠原主任と食事に行った時に彼女にも言われた言葉だ…

　わたしをよく見て、理解してくれている人が二人もいた…

　心が震える。

「そ、そうなんですか…」
「そんな彼の優しさに、人恋しくなっちゃうようになったんじゃないのかなぁ…」

　そうなのだろうか…

「だから…」
　彼女の目に吸い込まれそうになりながら、わたしは…

「美冴さん、わたしのお友達に…
　　　　　　　…ぜひ、なってください…」
　更に手を握り返しながらそう云ったのだ。

「でも…」

　えっ、でも何だ…

「でも、さっきゆかりさんが見て、想ったように…わたしは…」
　美冴さんの目の光りが歪む。

「わたしは…あんな…」
　わたしはその言葉を最後まで言わせたくなかったのだ。

「そんな、そんなことないです…
　わたしは、わたしはさっき嬉しかったの」

「えっ、嬉しかったって…」
　美冴さんの目が揺れる。

「さっきは本当に、抱かれたい、愛されたい、奪われたい…って」
　
　ああ、云ってしまった…

「本気でそう想ったの…」

「そ、そうなの…」
　美冴さんの目が戸惑いの色になる。

「はい…本気で想った…の」

　ザワザワ、ドキドキ…
　心が揺れて、そして昂ぶりだした。

「美冴さんのあの艶やかに濡れた唇が…」
　すると美冴さんの目が突然、濡れた目にかわる。


　あっ…