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　89　再会の意味

　わたしと和哉は、永久に再会しなくてもよかったのではないのか。
　
　だってわたしは決して和哉との再会は切望してはいなかったのだから…

　和哉との思い出は、わたしの中の禁断な、背徳の思い出として脳裏の奥深くにしまってあった事なのである。
　
　だからあの最後の日の朝に、和哉との永久の別れを想定していたし、そのつもりで携帯電話を解約し、理由も告げずにあの街を離れたのだから…

　ただ最近、佐々木ゆかり部長が時折わたしに対して向けてきていた憧憬的な意味合いの視線により、たまに、ごくたまにだけ和哉の存在感を思い出した事はあったのだが、再会は切望してはいないのだ。

　今となってはわたしにとっては和哉との事は、過ぎた過去の出来事として既に心の中で処理済みであり、逆に、禁断の関係だったが故に思い出したくない過去の一つとなっていたのである。

　だから何の因果の流れなのか…
　不思議でならないでいたのである。

　あっ…

　そうか…

　この再会はわたしの因果の流れなどではないのだ。

　和哉だ…

　和哉からだ…

　和哉からによる再会の強い切望からの流れなのだ、その流れに違いない。

　わたしは和哉によって引き寄せられたのであろう…

　それはそうであろう、和哉にしてみれば突然のわたしの失踪なのであるから。
　恐らくは理由も、想像は付いても知らない筈なのである。
　あくまでも和哉からは突然の失踪なのだ。

　だって、最後の別れの言葉は…

「じゃ、後で…」
　なのだから。
　それは
　また後で、和哉のバイトが終わってからね…
　と、いう意味の言葉だったのだから。

　和哉の５年間の強い切望の思いに引き寄せられたのである…

　だからあのファミレスチェーンであり、実家近くの駒澤大学近辺のファミレスでの再会なのだ。

　わたしは和哉の５年間という強い再会の

　切望の想いに…

　愛の想いに…

　引き寄せられての再会なのである。

　恐らく和哉自身の中では

　わたしに対する想いが…

　あの禁断の時間が…

　過ごした濃密な時間が…

　きっと、まだまだ、続いているのだろうと思われる。

　だからの再会なのであろう…