テキストサイズ

シャイニーストッキング

第5章 絡まるストッキング4 和哉と美冴1

 96 5年前、あの後…(3)

 二人で抱きしめ合いながら眠る…
 と、いう事にも感動をしていたし、堪らない幸せを感じていた。
 
 できる事ならば、この幸せが永遠に続いて欲しいとも思っていたのだ…

 だが、美冴さんは人妻であり、僕とは一回り以上も歳上なのである、現実には脆く、危うい関係といえるのだ。
 それは美冴さんに対しての想いが募れば募る程に、昂ぶれば昂ぶる程に、僕の心にひしひしと訴えてきていた。

 そして、なんとくなのだが妙に胸騒ぎを感じていた…




「おはよう…」

「あ、美冴さん、おはようございます…」
 午前7時を少し過ぎていた。
 僕は慌てて起きる。

「僕、バイト早番なんです」

「あ、そうか、じゃあ、一旦帰らなくちゃね…」
 僕はそう云って、起きて着替え始めた。

「わたしは…今日はお休みだから…」
 美冴さんはポツリと呟いた。

「あ、はい、知っています」
 僕はそう云って、美冴さんの顔を見る。

 何があったかは知らないけど、大丈夫なの?…
 そう見つめながら、目で語り掛けると、

「うん…
 大丈夫よ…ありがとう…」
 そんな僕の想いが伝わったのか、美冴さんはそう呟いた。

「は、はい…じゃあ、また後で…」
 またバイトが終わったら…
 僕はそんな意味を込めて、目で伝える。
 そして支度が整い、部屋を出ようとドアに手を掛けた。

「あ…」
 後ろから美冴さんの声がした。
 すると美冴さんは、部屋を出ようとする僕に後ろから抱き付いてきたのだ。 

「み、美冴さん…」
 僕は驚き、後ろを振り返る。
 すると、美冴さんは僕に口吻をしてきた。

「あ…」

「………」
 僕達は無言で口吻を交わす。
 そして舌を絡め合い、吸い合い、互いの心に秘めた想いを交わしていく。

 愛している…と。

「じゃ、後で…」
 そして唇を離し、僕はそう云って部屋を出たのであった。

 僕は突然の美冴さんのキスにドキドキしながらも、少しだけ違和感を感じてはいたのだ。
 だが、この時点ではその違和感が何なのか、想像もつかなかったのだ。

 そして
 
 じゃ、後で…

 じゃ、またバイトの後で…

 そういう意味の僕の言葉が、僕達の最後の会話と、そしてキスとなったのである。

 そしてこの時、まさかこれが最後の刻だとは夢にも思わなかった…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ