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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 43 『黒い女』の卒業

「佐々木課長、木曜と金曜日に急にお休みしてしまい、申し訳ありませんでした…」
 そう言いながら、頭を下げたのだ。

「あっ、いや、は、はい…」
 佐々木課長はそのわたしの言葉になんとなく動揺をしているみたいであった。

「迷惑掛けてしまって…」
 そう言いながら佐々木課長の目を見つめる。

「え、あ、はい、そう、体調不良だったんだから、仕方ないですよ…」
 そう小さな声で返してくる、なぜかわたしに動揺している感じであった。
 だが、なぜその様な感じになっているのかはわたしには解らない、そんなにこのわたしの変身が驚きと動揺を彼女に与えたのであろうか、と、その時思っていたのだ。

「そうよぉ、蒼井さん、それに急きょ貴方の代わりに佐々木課長もオペレーターしたのよぉ…」
 すると笠原主任がサッと、わたしと佐々木課長の間に入ってきたのである。

「ええっ、そうなんですか、それは本当に…」
 それは初耳であった、わたしのせいで佐々木課長にオペレーターをさせてしまった事には、思わず恐縮してしまうのだ。

「うん、それは大丈夫、気になさらないで、あんな時はねぇ…」
 お互いに仕方ない事なのだと、佐々木課長は少ししっかりしてきた様子になってそう返してきたのである。

「ま、そういうことだし、蒼井さんもあまり気にしないでさ…」
 笠原主任はそう言いながら、核心に触れてきたのだ。
 多分、二人には、いや、このオペレーションルームにいるスタッフ全員が、この事を一番訊きたい筈なのである。
 それはわたしにもよく解っていた。

「それよりさ、その、蒼井さん、その急なイメチェンはどうしたの…」
 やはり、そう訊いてきたのである。

「えっ、あ、はい…」
 わたしはにっこりと微笑みながら…
「うーん、まあ、ちょっと心境の変化がありまして…」
 そう言いながら、佐々木課長の顔を見て

「生まれ変わろうかな…と、あ、いや、違うか…」

 いや、元に戻ったんです…

 そう言ったのである。

「えっ、元に戻った…」
 すると佐々木課長は驚いた様子でそう呟いたのだ。

「はい、もう『黒い女』は卒業です…」
 にこやかに笑みを浮かべ、わたしは佐々木課長の目を見つめてそう言ったのである。

 その時わたしの目には佐々木課長の後ろに、あの大原部長の姿が見えていたのだ…







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