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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 44 憧憬の目
 
 その時佐々木課長の後ろに、大原部長の姿が見えていた。
 そして佐々木課長に今言った
 『黒い女』は卒業なの…
 と、いう言葉は、大原部長に抱かれたあの夜に彼に言った言葉なのである。

 そうなのよ、貴女の大原部長は、本当は貴女より先にこのわたしの変わった、いや、元に戻ったわたしの真の姿を見て、知っているのよ…
 もう一つのわたしの中の、女、という存在が心の中でそう囁いていた。
 わたしはこんな意を込めて佐々木課長の目を見つめていく、と、なんとなく彼女の心が色々と動揺をし、そして今度はあの目の色に変わった様に見えてきたのだ。
 そう、そう目の色は、あの中等部から高等部時代のわたしの後輩の貴恵こと『キーちゃん』や、あの禁断の関係をした『和哉』のあのわたしに向けていた『憧憬』の想い目の色と同じなのである。

 ああ、佐々木課長がまたあの目になった…
 わたしは彼女の目を見てそう想う。

 ズキ……ズキ、ズ…
 すると微かに心が疼いてきたのだ。

 あ、ああヤバい、かも…
 また、抑えの効かない暴走が始まってしまう恐れがきたかもしれない。

「あっそうだ…」
 すると、突然の笠原主任の声がわたしを現実に引き戻してきたのである。

 あっ…
 わたしはその声で、ハッ、と我に返ったのだ。
 
 ああ、ヤバかった…
 わたしはスッと気持ちが落ち着いたのだ、笠原主任の声で助かったのである。

「今日の夕方、落ち着いたら、また、面談しますから…」
 そして笠原主任はわたしにそう伝えてきた。

「は、はい、わかりました…」
 これは確か、この前部長が言っていたはずだ、そう思い出し、わたしはすんなり頷いたのだ。
 
 すると、やはり笠原主任の声によりやや落ち着きを取り戻した様な佐々木課長が再びわたしを見てきていたのである。
 その目はまだ、何か、わたしに訊きたい様な目をしていたのだ。

「じゃ課長、そういうことで…」
「あ、はい…」
 笠原主任の言葉で、とりあえずその場は終わったのである。
 そしてわたしは席に戻る。

「じゃあ蒼井さん、そういう事で夕方よろしくね…」
 あ、残業になっちゃうかも…
 そう笠原主任が言ってきた。
「はい、それは大丈夫です…」

 すると
「やはり、貴女は、こっちの方が素敵よ、綺麗だわ…」
 そう囁いてくれたのである。

 

 
 

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