テキストサイズ

シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 21 惹かれる想い

 それは明日から9連休という長期休暇が始まるのであるが、そんな心の緩みのせいもあるのだろうか…

 その健太からのお誘いメールに、今度は、今夜は、何処に行こうかな…
 そんな想いが昂ぶっていたのである。

 このわたしが、今夜の健太のお誘いにときめき、ドキドキと昂ぶっている…

 そんな筈は…

 確かに一昨夜、健太に告白的な言葉を告げられ、それを了承し、快諾した。
 そしてそれは、わたし達二人が付き合うということの始まりでもある。
 だがその時のわたしにとっては、佐々木ゆかりさんとの間に結んだ新たな友達関係の交情により、それまで秘密の関係を持っていた大原浩一本部長との決別の意味があったのだ。
 いや、その意味の比重はかなり重かったのである。

 そして、その大原本部長との関係のスペア的な位置からの、仕方ないから昇格させた…

 例の自律神経の暴走を治める為にも、鎮める為にも、今度は大原本部長から健太にとりあえず代えよう…
 そのくらいな軽い気持ちを持っていたはずだったのである。

 だが、こうして、今、今朝からの想いを振り返ってみて、そしてこの健太の部屋のベッドルームのダブルベッドを見て、一瞬、感じてしまったこの嫉妬心的な想いに…

 そしてときめきに…

 わたしは戸惑いを感じてしまっていたのであった。

 えっ、わたしは…

 わたしは本気で健太に惹かれているのか…

 想いが傾いてきているのか…
 



「健太さん、お待たせ…」
 わたし達は新宿西口で待ち合わせをした。

「いえ、俺も今着いたところですよ」
 そしてそう言った健太にわたしは無意識に彼の腕を掴み、絡めたのだ。

 えっ…
 実はわたし自身、その無意識の所作に驚いてしまった。
 そして勿論、健太も驚いたようであったのだ。
 
「あ、え…」
 健太は一気に動揺し、そう呟いていた。

「あ、ごめん、ダメだったかな…」
 わたしは咄嗟に照れ隠しで、その言葉を呟いたのだ。
 
「い、いや、全然、ダメじゃないっす」
 すると健太は嬉しそうにそう応えてきた。

「お腹空いたぁ…」
 わたしはそんな自分自身の無意識の所作に内心驚き、誤魔化したのだ。

 これは…

 この腕は…

 もう健太に心を許したという、そういう心の現れなのか…
 思わず健太を見つめてしまう。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ