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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 12 愚問…

 ふうぅ…
 僕はようやく金縛りから解放された様な感じがしてきていた。

「ふうぅ…」
 この吐息と共に、緊張感と高ぶっていた鼓動が緩やかになってきたのだ。

 よしっ、少し落ち着いた…

 ここから頑張らなければ…

 せっかく、理由はどうあれ美冴さんが今夜わざわざ逢ってくれているのだ。

 いつまでもウジウジしていたら、飽きられて帰られてしまう…

 そして僕はようやくちゃんと顔を上げ、美冴さんの美しい顔を見る。

 ドキドキドキドキ…

 ああ、でも、本当に美しい、綺麗だ…

 あの五年前より遥かに若く、美しく、なんとなく凛と輝いて見える…

「あ、あのぉ、美冴さんは今は…」
 あの後の結婚はどうなっているのか、一人なのか、独身なのか…
 と、いう意味で問い掛けた。

 あの五年前に美冴さんの後にお付き合いをさせてもらった、もう一人のパート主婦の朱美さんの話しからも、離婚したのではないのか…
 と、は、予想はしていたのだが、一応確認の為に訊いてみたのである。

「うん、今はねぇ…
 ○○商事会社って知ってるかな、そこの新規プロジェクトのひとつの部門の主任をしているの…」

「えっ、あ、いや…」
 ちゃんと言葉で訊かなかった僕が悪いのだが、なんと美冴さんは、今の仕事の事を訊かれたと思ったらしく、仕事の内容を話してきたのである。

「えっ、あ、なにぃっ、ち、違うのぉ」
「あ、い、いや、そのぉ…」
 すると僕の顔で察したらしい。

「もお、ヤダなぁ、仕事の話ししちゃったじゃないのよぉ…」
 照れ笑いをしながら、そう呟いたのだ。

「すいません、あのぉ、あ、そのぉ…」
 なんだか僕も、急に訊きづらくなってしまった。

「もお、ヤダわぁ、今更そんな事を訊いてくるなんてぇ…
 当たり前じゃないの…
 もちろん離婚して一人よ…」
 今度は苦笑いをしながら、そう云ってきたのだ。

「あ、はい、スイマセンです…」

 いきなり愚問であった。
 本当に今更な質問であったのだ。
 いや、ある意味、失礼な問い掛けであった。

 しまった…

 再び、焦燥感が湧き起こってきそうであった…
 のだが、美冴さんは意外にも軽く答えてくれたのだ。

「あの最後の日の夕方に、離婚したのよ…」

 そして話し始めてくれた…

 まずは一つ、疑問が解けていく…







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