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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 4 ゆかりの存在感

 本社ビルは30階建ての自社ビルであり、副社長の部屋はもちろん最上階の30階にある。

「しかしアレだな、あの佐々木ゆかり部長は物凄い美人だなぁ」
 と、30階の副社長の部屋に向かうエレベーターに乗った途端に山崎専務がそう話してきた。

「あ、はい、そうですね」
「あれ程の美人だったら、この前大原くんが云った様に記者会見に同席させなくて良かったよ…」
 この前、銀座のクラブ『ヘーラー』で山崎専務が記者会見はおっさんばかりたがら華の意味でゆかりを同席させようか…と、一瞬、話してきた事があったのだ。

「あんな美人じゃ、大原くんの云う通りで記者達が全部彼女に注目してしまって私の存在が霞んでしまうところだったなぁ…」
「あ、はい、そうでしょう」
 この前、わたしがそう山崎専務に忠告したのであった。

 だが多分、彼女を出席させてしまったら本当にそうなってしまい、せっかくの山崎専務の手柄が霞んでしまうのは間違いなかった、だからわたしは山崎専務を説き伏せたのである。
 そしてもしもそうなってしまったならば、せっかく順風な私とゆかりへの風向きが変わってしまう恐れもあったのだ。

 ただ、ゆかりに対する山崎専務の褒め言葉としては悪い気はしなかった…


「しかしアレだな、あれ程の美人だと大原くんもソワソワしてしまうんじゃないのか…」
 まさかの山崎専務からのそんな言葉ではあるのだが、さすがに私とゆかりの関係について決して本当の事は言えないし、現時点ではバレる訳にもいかない。

「いや、それは無いですよ、ただ優秀なパートナーとしては頼りにしていますが…」
 と、私は山崎専務に悟られ無いように必死に冷静さを装ってそう話した。

「ま、そりゃそうか、あ、それにアレだな、大原くんには今は律子がいるからなぁ」
 と、笑みを浮かべてそう言った。

 律子か…

 突然、山崎専務の口から、そしてこのシチュエーションで律子の名前が出たので一瞬ドキッとしてしまう。

「あ、い、いや…それは…」
 そして少し動揺もしてしまったのだ。
 だが、却ってその動揺が良かったらしい。

「ま、律子もさっきの佐々木くんに勝るとも劣らずのかなりの美人だからなぁ、そこまではソワソワしないかぁ」
 と、山崎専務は少し笑みを浮かべてそう言ったのである。
 



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