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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 5 ゆかりの為に…

「ま、律子もさっきの佐々木くんに勝るとも劣らずのかなりの美人だからなぁ、そこまではソワソワしないかぁ…」
 と、山崎専務は少し笑みを浮かべてそう言ったのである。

 どうやら『ヘーラー』のママからある程度の私と律子の関係の情報を訊いている様であり、だから山崎専務の頭の中からはゆかりとの関係の話しはサッと消えてくれた様であり、私はホッとした。
 そしてエレベーターは最上階に到着する。

 今から、山崎専務の後ろ盾である松本副社長に記者会見の報告をするのであるのだが、私自身はこの松本副社長とは初めての対面となるのだ。
 
 まさか、松本副社長と対面できるとは…

 山崎専務は私の大学の先輩であり、また、松本副社長も同じ大学の山崎専務の直接の先輩なのである。
 そして私はそれが切っ掛けで山崎専務の派閥に自然と所属したカタチとなり、また、山崎専務の色々な引き立てによってたまたま実績が上げられ、そんな松本副社長派閥の中の直属の山崎専務派の中で、先輩方約10人抜きでの本社本部長となり、今回の吸収合併した保険会社での執行役員となったのである。
 それが現在に至る簡単な経緯といえた。
 
 だからその流れからの松本副社長派閥であり、ナンバーワンが山崎専務、そして当然の様に私も松本副社長派閥の最下部というカタチになっていた。
 
 傍から見たら、現在の私の立場の全てはこの山崎専務のお陰である…
 のだが、実は、今の私自身にはそこまでの出世欲というモノを先の離婚を切っ掛けに無くしてしまっていて、この山崎専務による出世は本心では無いといえるのである。
 
 ある意味、無欲の出世なのだ…

 だが最近ようやく再び、公私共に佐々木ゆかりという素晴らしいパートナーを得たせいもあり、そしてキャリア志望である彼女の為にもと、この無欲に少し火が灯ってきていた…
 と、いう気持ちを実感しつつあったのだ。

 それはつまり、私自身の出世イコール、それが彼女のキャリアアップの為になる…
 と、いう図式を少し意識し始めてきていたのである。

 そして全てはこの山崎専務のお陰ではあるのだが、今から松本副社長と対面するという事も私自身とゆかりのキャリアアップの為にもなるのだ…
 と、考えてもいた。

「山崎です、失礼します」
 そして私は、山崎専務と共に松本副社長の部屋に入る。




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