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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 16 ゆかりとの電話 ⑥

『あら、嬉しいわ、そんな甘い言葉を言ってくれるなんて…
 何かありました?』

「えっ、あっ、いや…」
 そのゆかりの言葉に、一緒ドキッとしてしまう。

『あ、昨日、今日って、そんな余裕ありませんものねぇ…
 ちゃんと素直に喜びますね』
 と、言い換えてくる。

「そ、そうだよ、こっちは昨日からの急展開でそんな余裕なんか無いんだから…」

『あらぁまあ、、いつもはあるのかしら…』

 あっ…
 自ら墓穴を掘ってしまった。

 やはり、ゆかりは銀座絡みは少しは気にしているのだろう…
 と、そう思ったのである。

「あ、いや、そんなこと…」
 本当に私はそこら辺の誤魔化し方がヘタであった。

 こんなんじゃ、とてもワイルドに尖れないな…
 だが、今夜のゆかりは優しく、機嫌が良い、いや、さっきの甘い言葉が効いたのだろうか。

『ま、今夜は銀座では無いですからね』
 と、笑いながら言ってきたのだ。

「あっ、それよりも…、テレビ局の方はどうなんだ?」
 私は慌てて話題を変える意味も含めてそう訊いた。
 本当に、それはそれで気にはなっていたのである。

『新規事業計画プロジェクト』である新しいカタチといえるインターネット対応の生命保険会社の件は、まずは計画プロジェクト準備室のメンバーも決まり、お盆休み明けからは正式に始動する運びとなってとりあえずは一段落したのだ。
 だが、もう一つ並行して『新規案件』といえる、我がコールセンター部での全く正反対な業務態勢となる大きな仕事が動いているのである。
 そしてその対応にゆかりはお盆休み前半を返上してのテレビ局3社相手の打ち合わせの会議を連日行っていたのであった。
 
『え…、あ、うん…』
 一瞬、私が話題を変えた事に気付いた間があったのだが、すんなりと応えてくる。

『うん、かなりまとまったわ、後は細かい金額の設定と、そして開始時期と、契約期間の問題かなぁ…
 要は、専属での契約になるのか?
 それとも需要のみの単発になるのか?かなぁ…』

「うん、そうか…」
 それは私の思っていた以上の進展といえた。

『とりあえずねぇ、お台場のテレビ局の流れ次第になるかもしれないのよね…』

 お台場のテレビ局…
 それはそもそものこの仕事の話しのきっかけとなる営業社員の杉山の父親のいるテレビ局である。





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