テキストサイズ

シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 170 昔の関係

 正に私にとっての『希望ののぞみ』であったのだ…

 そして私は、いや、おそらくノンもそうなのであろう、気持ちが、心が、すっかりとあの23年前に戻ったかの様な想いと、高ぶり、昂ぶりとなって昔の思い出話しに花を咲かせていたのである。
 
 花を咲かせて…
 いや実は、殆どがノンが昔の思い出を話していたのだ。
 だがそれで良かった、なぜならば正にその感じがあの昔の23年前の2人の関係であったからである。

 いつもノンが明るく色々と話しをしてきてその話しや話題に対して私が応え、答える…
 そんな感じであり、それがまた私にとっては楽でもあり楽しかったのだ。
 そして私自身は大先輩のヒロさんの誘い通りにサーフィンを始め、そしてヒロさんにも云われた通りにすっかりとサーフィンにハマってしまい、当時の不良仲間とは縁こそは切らなかったのだが、関係性は薄れ、ほぼ生活、趣味、嗜好、思考等の全てがサーフィン三昧となったのであった。
 そして不良仲間達も、元々が野球三昧だった私の個性を理解してくれていたのである。
 また、ノンもすっかりヒロさんの彼女の妹分の様になり、私同様にサーファーギャルまっしぐらとなったのだ。

「あ、そうそう、ヒロさん達は結婚したのよ」

「ああ、それは風の噂で聞いていたよ」

 そんな私はというと…

 大学進学と同時にすっかり東京での生活を謳歌し始め、大学では本格的にサーフィン連盟に所属して大学学連サーファーとなり、サーフィン三昧の生活と都会の生活に染まってしまったのであった。

「そうよねぇ、大学入ってからパッタリだったもんね…」
 と、ノンはチクリと、いや、グサリと痛い処を刺してきたのである。

「あ、ああ、そ、それは…」
 そのノンに返す言葉が無かった。
 なぜなら、私は大学入学の上京により、その年は全く帰省しなかったのである。
 そしてその当時アパートには電話はあったのだが留守番電話機能は無かったし、殆どアパートには帰らなかったし、帰ったとしても深夜だったのでなかなか連絡の取り様がノンにとっては無かったのだ。
 いや、実は、すっかり大都会東京での大学生活が楽しいし、楽し過ぎたし、すぐに大学生の彼女が出来てしまって、本当にノンとの関係の『自然消滅』を狙っていたのである。

 だからそんな言葉には、何も返す言葉が無かったのだ…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ