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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 173 誰にも分からない…

 そしてそこからならば湘南や静岡方面にも行けるし、高速道路網の充実により、千葉県は元より、茨城県、福島県方面までも比較的簡単に出掛けられるのだ。

 そして大学にも…

「オレはその頃は八王子に引っ越ししてたんだ…」
「ええ、そうだったんだ」
「あ、うん、ゴメン」

「だから、謝らないでって…
 だってもう丸一年間経ってたんだし、それに諦め悪いわたしが悪いんだからさ…」
 ノンは自虐気味に呟いた。

「もうある意味ストーカーよね」
 そしてそうも呟いたのである。

「いやそんなことないさ、全部オレが悪い、悪かったんだよ…」
 そう言ってノンを見つめる。
 本当に心から懺悔の想いが湧いてきていた。

 そしていたたまれない想いも湧いていた…

「でもね…」
 するとノンは一転してにこやかな笑顔になったのだ。

「でもね、あの時こうちゃんに会えなかったお陰でさ、新しく彼氏が出来てさ…」

 まさか、そうなのか…

「うん、それが旦那なのよ…」
「そうなんだ」

「うん、もう亡くなっちゃったけどね」
 と、意外にも明るい笑顔でそう言ってきたのである。

「いい人だったわよ、優しくて、ウチの両親の事もいつも気に掛けてくれていたしさぁ…
 それに息子二人にも恵まれたしさ…」

「そうか、それは…」
 本当に良かった…

「もしも…
 もしもあの時、万が一、こうちゃんに出会っていたらあの旦那には会ってなかったわ…」

 それは誰にも分からない…

 神様にしか分からない事である…

「うん、いや、それはどうかなぁ…」

「ううん、そうなのっ」
 ノンの口調が強くなり、そうハッキリと言い切ったのである。
 そしてその目もさっきまでとは変わってきていたのだ。

「わたしはさぁ…」
 …あの頃は本当に、こうちゃんの事が大好きだったの…
 そう囁いた。

「えっ…」
 そして急に胸がザワザワと騒めいてくる。

 それは、一瞬、そう呟いたノンの目の輝きが、愉悦の輝きに見えたからであったからである、そして心なしか潤んで濡れてきたような…

 えっ…

 そして愉悦から…

 淫靡な光りに…変わった様に見えたのだ。

 えっ、な、なんだ…

 ノンが…

 まさか…

 まさかノンが、欲情しているのか?…

 そしてザワザワがドキドキへと変わった…





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