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綺麗なあの人に抱かれたい!

第8章 大好き!

 卯月さんと一緒にいたいと強く願ったのは、私が彼を好きだからだ。

 じゃあ彼のどこが好きなんだろうと考えた時、何も頭に浮かんでこない。こういう所が好き、だと思う部分はあれど、それは人として好意的に思う部分であって、その部分に惹かれたという実感はない。

 もともと彼は、私の最も苦手とするタイプの人間だった。俺様気質で無愛想、口も悪くて上から目線の口調と態度。絶対好きにはならないと思う人。

 でも、好きになった。
 特別な人になってしまった。

 一緒にいる時間が増えて、見えていなかった彼の人となりが見えてくる。実は世話焼きで面倒見がよくて、几帳面で真面目な人。綺麗好きで家事能力に至っては完璧。私より、いや、そのへんの女子よりも女子力は高いと思う。

 そういう意外性に惹かれたのかな? とも思ったけれど、やっぱりピンとこない。
 人が人を好きになるのは、そのキッカケとか過程があるはずなのに、それもわからない。

 実際に離ればなれになってから、初めて彼の存在の大きさに気づかされた。
 ただ仲良くなれたから寂しいだけ、というだけの話であれば、彼が部屋に訪れた際、あんなに号泣するほど取り乱したりはしない。

 今までたくさんの出会いと別れを繰り返して、これほどまで離れたくないと願った人は、過去にいないと思う。

 卯月さんはやっぱり、どこまでも私の調子を狂わせる人だった。

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