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綺麗なあの人に抱かれたい!

第9章 ☆後日談【1】恋する幸せを教えてくれたのは、あなたでした。

「……水族館、出た後さ」
「……うん」
「すれ違う男は、みんな奈々を見てた」
「……え?」
「腹立った」
「………」

 え。それだけ?

「………」
「……なんだよ」
「ふふ」

 ぶっきらぼうな声音に笑みが零れる。

 卯月さん、妬いたんだ。
 妬いてくれたんだ。
 そんな可愛い嫉妬を見せられたら、愛しさが込み上げてくる。涙も引っ込んじゃった。

「男からジロジロ見られて、奈々、完全に顔がニヤけてたから。俺が横にいるのに、そんなに野郎から見られて嬉しいのかと思ったからムカついた」
「違うよ。すれ違った人はみんな、私じゃなくて卯月さんを見てたんだよ。だから嬉しかったの」
「……なんで?」
「めちゃ気分よかったから」

 この人わたしの彼氏です! って、高らかに宣言しちゃいたいくらいだった。
 そう告げたら、卯月さんは目を丸くして、少しだけ切なそうに笑った。ゆっくり倒れこんできて、ぎゅうっと抱き締められる。

 私達、まだ繋がったままなんだけどな。
 私の中にある卯月さんのモノは、ちょっと勢いをなくしてちっちゃくなってる、気がする。

「……そこなんだよな、俺と奈々の違いは」
「うん?」
「……ごめん。勝手に焦った」
「……そうなの?」
「……前の彼女の時にもあったんだ、同じようなこと。それで嫌な思いも散々したから」
「………」

 前の彼女、と言われて思い出す。初めて卯月さんと出会った日、頬にくっきりとビンタされた跡を残した卯月さんの姿。癇癪持ちの女だった、もう耐えられなかった、そう言っていた。

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