テキストサイズ

甘い蜜は今日もどこかで

第4章 【届かない想い】






「あ、あの、私、彼氏なんて……」




2人の先輩方は顔を見合わせて「またまた〜」って言ってくる。
「いつも送ってくれてる優しいカレ居るじゃん」と言われてピンときた。
えっ!?ジロウのこと!?
そうか、言ったことなかったもんね。




「あの、カレは彼氏ではなくて」




「いつも降り際、運転席から降りてまで見送ってるもんね、めっちゃ可愛い顔してるなって思ってて、年下?」




「わかる、わかる!藤堂さん見えなくなるまで見送ってる姿キュンとくるよね、ていうか皆、彼氏だと思ってるけど違うの!?アレ、絶対に藤堂さんのこと好きな目だよね?」




ちゃっかり見られてたんだ。
先輩たち、何故に出社が被らんのだ!?
さては、会社前のカフェで時間潰してるな?




「あ……いや、カレはうちの会社の者です」




「だから、社内恋愛なんでしょ?毎朝一緒に居るってまさかもう同棲してるとか?」




「違います、違います、うちの会社、送迎車あり…なんですよ、だからカレは私の運転手さんなんです」




「え〜!そこで愛は芽生えないの〜?あんな可愛い子毎日見てたらどうにかなっちゃうでしょ」




うーん、それがリアルでは上手くいかないんですよ。
傷口エグらないでもらえます?
いえいえ、と否定しても信じて貰えない様子。
でも第三者から見てもやっぱり可愛いって思われるんだよね、ジロウは。
わかる、ヤバいでしょ?
早くモノにしたい……なんて腹の底では思ってました。




「とにかく、彼氏ではないです、今は……お付き合いしてる人は居ません」




「えー!ウソー!」
「この顔面でそれ言っちゃう?」
2人して「勿体なーい!」と言われましても、事実なんだから仕方ない。
その後すぐに室長が戻ってきたので各々仕事に戻る。








「ちょっと……ダメです、副社長」




「うん…………充電」




1日の終わりには夕日をバックにハグされる。
頼まれた資料をお持ちしただけなのに。
罠だとわかりながらハマってしまう。




「もうあとちょっとで椿の顔見れなくなるから」と退社の1時間前なのにコレだ。
まだ片付けたいこともあるのに。
今日中に仕上げる作業はとっくに終わっているけれど。










ストーリーメニュー

TOPTOPへ