甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
変わらないものがあるとすれば、それはジロウの存在なのかな。
頬も冷たくなって寒いところでずっと待っててくれた。
マンションに着いて「珈琲だけ飲んで帰れば」って言ったけど遠慮しちゃうのがジロウなんだよね。
「ゆっくり休んでください」と優しく笑うんだ。
手を振ってマンションに入るようジェスチャーする。
仕方なく背を向けたけど振り向いたらやっぱりまだこっちを見ていて。
もう一度外に出てしまった。
「ジロウ…!明日、また麻婆豆腐食べたい……辛いの…!」
今言うことか!?て思ったけど、いつもの優しい笑顔でジロウは頭の上で両手で丸を描き「オッケーです!」って全身で応えてくれた。
それだけで涙ぐんでしまう私は、悟られないようにすぐに踵を返した。