甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】
「何年一緒に居ると思ってんの?ジロウのことは何でも見抜いちゃうよ?」
「僕も見抜いてましたよ、こんなの嘘だって」
ゆっくり振り返って私を見つめるその瞳。
フワフワな髪がワンコみたいでやっぱり良いなって癒やされる。
「見抜いてて来ちゃったんだ?何に期待して?」
「ハァー、椿さんこそ何企んでるんですか?僕は専属契約された椿さんに毎日送迎しなきゃなんで早く帰って寝たいんですけど」
「じゃ、また泊まれば良いじゃん」
「そんなことを言ってる場合じゃなくて、もう少しお互いの立場意識して行動しないと、吉原さんも…っ」
グダグダ長くなりそうだからキスで遮ってあげた。
グッと引き離してきて、ちゃんと拒めれんじゃんって思った。
「だから…!こういうのはちょっと……僕も昨日はどうかしてました、でも僕はまだUNEEDで働きたいんで」
「うん、一緒に働こう?私、ジロウが居るから頑張れるんだよ」
ふと見上げた視線が絡んで離さない。
ここまで言われたら断れないでしょう?
ヘタレなキミは拒めないのよね。
「2人だけの秘密だから」と言って再び唇を塞いで舌を割り入れた。
好き……ジロウの舌先……何度味わっても甘く感じるの。
ほんの数秒間キス。
私から離れてニッコリ笑った。
キスはするけど言葉にはしない。
「おやすみ、また明日」
「はい、おやすみなさい、明日また迎えに来ます」
「気をつけてね」
万が一誰かに見られていてもちゃんと言い訳出来る関係で居ること。
プラトニックな愛を振り撒いて、手から離れていきそうなら独占しちゃうよ。
ジロウはそのままのジロウで居てもらわないと。
勝手に首輪外すなんて許さないよ。
「本日より副社長の秘書業務に就かせて頂きます、UNEEDより参りました、藤堂椿です、宜しくお願い致します」
と言ってもほとんど顔見知り。
拍手で迎えられたが本来なら、私は社員教育で派遣されるはずだった。
なのに何故、隣でこの男は平然と笑っていられるのだ。
「早速この後10時からの役員会議に出席してもらうよ」
「承知しました」