甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
「うん、打ち合わせもすぐ出来るし離れちゃうと浮気されても困るから」
え、その顔でサラッと言います!?
ミュージシャンって括りだけでも凄いのにスイッチ入ると完全に憑依しちゃうんですね。
気持ちごと預けてって言われたのはこういうことなのかな。
ジロウが何か言いかけたけどDAiKIさんの圧に押し退けられちゃった。
吉原さんも「どうぞどうぞ」って乗り気だし。
「じゃ、遠慮なくつーちゃん借りますね」と手を取り2人掛けソファーのある席へ座った。
えっと、カメラ回ってないし休憩中なはずなんだけどずっと手を繋いでる。
もしかして、撮影が入れば役になりきって抜けきれない人…?
めちゃくちゃ喋ってくれて変な空気にならないから助かってるけど。
「あ、つーちゃんって手繋いでて大丈夫なタイプ?」
「え、それ、今更聞きます?」
「強引だったかなって今、思った」
「あ、そういう人なんだ…って私の中でそう解釈しましたので大丈夫ですよ、お手洗いの時はギュギュッと2回くらい握れば良いですか?」
「プハッ!ヤバ、つーちゃん面白い、何でも自分流の考え持ってて飽きないんだけど!?毎回想像を越えてくるよね、そうだね、トイレの時はその合図でいこう!あと、もう敬語はナシ!良いでしょ?付き合ってるんだから」
“今は”ね。
ファンが聞いたら即効勘違いして怒られちゃいますよ。
ちょっとだけ驚いたフリして、一応考えて、ニッコリ笑う。
「わかった」って初めて敬語じゃない返しにDAiKIさんも笑った。
「つーちゃんの笑顔、良いね、癒やされる」
「え、初めて言われた〜よく言われるのは何考えてるかわかんないってばっか」
「そうなの?俺には全部可愛く見える」
「お、おぉ…?やけにストレートだね」
「照れてるつーちゃんも可愛いから」
「誰にでも言ってそう〜」
「言わないよ、こんなしっかり意思表示する俺ってマジでレアだからね?」
「本当に〜?」
「一目見た時から、あ…この子だって思ったもん、インスピレーションが凄い勢いで降りてきて気付いたら曲出来上がってた」
「え………スゴ」
「もっと言って?俺、実は凄いの」