甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
チャラさは誤魔化しきれない人だけど、仕事となれば全身全霊でぶつかっていける人なんだろうなってわかる。
生まれ持った天性で才能で、奇人である。
このMVにも相当思い入れがあるはず。
馬鹿みたいにこだわってこだわってこだわり抜ける人なんだ。
「ダイちゃん凄い……自慢の彼氏だね」
男心を擽る接し方は熟知している。
レンカノみたいなものだから。
3日間だけ恋人で居れば良い。
私にとっては容易いこと。
後腐れもなく気持ちはリセットに持っていける。
決してゲームオーバーだけはしない。
「ヤバいな、俺……つーちゃんに全部持ってかれそう」
「え、ダメなの?こんなことしてドキドキさせてくるのは何処の誰?」
「俺、付き合ったら四六時中一緒に居たいタイプで重めな設定なんだけど大丈夫?」
「設定…なんだ、ふふふ」
「いや、設定じゃないと単なるヤバい奴じゃん、俺」
「アハハ…!だよね、まぁ、全部、受け入れるつもりでは居るけど」
「本当?」
「無茶じゃなければね…?常識の範囲内」
「ふーん、じゃ、さっきの撮影した時のキスはその常識の範囲内だった?」
「頭の中でね、ずっとダイちゃんの曲流れてるよ?だからあのキスシーンは必然だったし納得してる、歌詞にピッタリだったね」
そう言って笑ったら優しく笑い返してくれて髪も撫でられた。
不意打ちには不意打ちで返してくるのは流石と言うべきか。
何か、血が騒ぐって感じ…?
どっちが冷静で居られなくなるか、的な。
本気で落としてみたくなる。
俺はそう簡単には堕ちないよ、疑似恋愛で俺に勝てるヤツ居る?
そう言われてる気がした。
だからプロであるUNEEDのキャストを指名したのかなって。
どこまで信じて良いのか曖昧だらけの会話たち。
でも互いにそれを楽しんでいる。
大事な一線は最初に決めておいて、それ以外ならとことん甘い夢見させてあげる。
例えそれがプロのアーティストであってもクライアントには変わりない。
スタッフ全員含めての食事の席でも私とDAiKIさんは隣同士。
お手洗い以外離れることはなかった。
お手洗いに行った際に電話で秋山さんと連絡を取り合う。