甘い蜜は今日もどこかで
第6章 【キミの隣に居たい】
「ごめんなさい、私……こういうお仕事してるのでどうしても、クライアントとして見てしまうんです、勿論、そういう風に接しなければならない規約もありますしUNEEDの看板背負ってるんで、そのお気持ちだけ嬉しく頂戴しますね、それ以上はお応え出来ません」
「やっぱ正面から行ってもなびかないか」
「うーん、正面じゃなくても」
「え、俺フラれる?」
「え、え?」
「どうやったら俺の彼女になってくれるの?仕事抜きでこれから会ったりもダメ?」
「えっと……ダメ……ですね」
「プライベートな連絡先、教えてくれませんか?」
急に敬語……調子が狂う。
握られている手は解けない。
パラソルの下で見つめ合う目と目。
逸らせない距離感。
「ダメです、本当に」
「つーちゃんが欲しい、マジで」
潮の匂いが辺りを包んで、DAiKIさんマジックに呑まれそう。
風で髪が口についちゃって、それを直してくれる指先にドキドキして。
普通ならもう心ごと奪われているものなのかもね。
普通じゃない私は。
「ごめんなさい、好きな人が居るので」
「それって吉原さんと一緒に来てたマネージャーさん?」
「え?いや、別で」
咄嗟に嘘をついてしまったけど全部話すつもりはない。
この告白にお断りするだけ。
ちゃんと、自分の言葉で。
「マネージャーだもんね、違うか」
「はい……」
「その人とはお付き合いは?」
「最近、やっと……」
「うわ、ニアミスじゃん!え、最初からチャンスなかったってこと?撮影始まる前に付き合ってた?この話が決まった直後!?」
うわ、質問多いな。
変な汗掻いちゃう。
この辺は上手くボカしますね。
どうにもこうにも行かないってやっとわかってもらえたかな。
急に悄気げられて申し訳なく思う。
「でもありがと、ちゃんと正直に応えてくれて……本当、全く入る隙がないね、彼氏羨ましい」
「あはは」
「ていうか彼氏、この仕事知ってるの?その、俺と結構……キスしちゃったり、とか」
「はい、理解はしてくれてます、かなり嫉妬はしてるでしょうけど」
んふふ、これは本当。
帰ってからがとても楽しみ。