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甘い蜜は今日もどこかで

第6章 【キミの隣に居たい】






「最後の涙、アレ反則なんだけど」




「え…?アレは……見逃してください、緊張が解けた瞬間だったんで感極まっちゃって」




「あんな堂々と俺に合わせて演じてくれてたのに一気に素に戻っちゃうんだもん、好きになるなって方が無茶じゃない?」




「え………?」




ヤバい、指絡めてきてる。
真っ直ぐこっちを見て優しく微笑むの。
顔だけが熱い。




「お互いプロだからその辺の線引は出来ると思ってた……実際、恋人同士の設定は楽しかったし……あ、俺、恋愛するとこんな気持ちになってたわって思い出せたし」




「そ、そうなんですね」




「うん、何もかも熱い時の気持ち、つーちゃんとだから取り戻せたっていうか……つーちゃんに本気で恋しちゃってたんだと思う」




あれ、何かヤバい雰囲気?
本気で言ってる?
照れてるフリする?
軽く受け流すのは違う。
クライアント相手にそれも許されない行為だ。




「つーちゃんはどうだった?俺に対してどんな気持ちで撮影してた?」




えっと、席も近い。
波の音も。
真っ直ぐDAiKIさんだけを見つめ返して。




「恋人そのものでしたよ、調子に乗って私も恋愛関係を楽しんでました……というより、DAiKIさんがそうさせてくれたんじゃないですか、ズルいですよ、恋したとか簡単に言わないでください、私、決して勘違いとか規約違反出来ない立場ですので……それわかってて言うのはズルいです」




どんな顔で言うのが正解なのかはわからない。
でも、どんな時でも誠実で居たい。
ぶつけてきてくれてなら真摯に応えなければ。
真に受けてしまう面倒臭いキャストなんです、私は。




レンカノやレン妻でもそう。
恋愛関係を楽しませた上で引くところは一気に引くから。
だからリアルでの恋愛は上手く出来なくてポンコツなんですけど。





急に椅子ごと向けれて向かい合う。
びっくりして固まってしまった。




「ズルいのはつーちゃんでしょ?俺の気持ち、全部持ってったんだから」




「え……?え、え!?」




「本気で、口説いてんだけど」




近いよ、本当に。
チラッとペンションの方を見てもジロウたちは確認出来なかった。
すぐに視線を奪われて何やら危ない雰囲気。









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