甘い蜜は今日もどこかで
第6章 【キミの隣に居たい】
レンカノやレン妻した日はちょっと機嫌が悪かったりするのも全部受け止めてくれてて。
見てたくせに何とも思わないのかよって拗ねてただけなのに「お疲れ様でした」って頭撫でられるだけで本当は機嫌直っててキスしたくて堪んなかったんだよ。
心が擦り減った分、満たして欲しかった。
何年も待ったよ。
ジロウがヘタレだってことは重々承知だったけどいつか男になってくれるんじゃないかって期待してさ。
まぁ、何もなかったよね。
生粋のヘタレだったわ。
こっちから色々と仕掛けても反応はするものの、いつも自分を保とうとしていた。
途中でキャストだから恋愛対象にはならないのかと苦しんだ時期もあった。
仕事している私は本当に輝いてるんだって。
クタクタになって帰って来ても機嫌悪くても全部輝いて見えるんだと。
もう勝手に玉砕してさ、半分諦めて開き直ってみたら案外楽しくなっちゃって。
ねぇ、本当は私のこと好きなんじゃないの?って傲慢な態度に出ても面白いくらい顔に出てた。
その度に勘違いしそうになって胸がチクチクしたけど、結局フラれて気まずくなるのだけは嫌だったからその時は引いたりして自分を押し殺すように。
何かいつの間にか私もヘタレになってたよね。
知らないうちに私が掌で転がされててさ、ウケる。
でもやっぱりこのままは辛いから。
いつまでもお利口さんでは居られなかった。
欲しくて欲しくて堪らなかったの。
だからこの仕事を引き受けた時に、もう自分の中では腹を括ってたのかも知れない。
ジロウがどんな風に出てくるか。
どんな顔して、どんな気持ちを抱いてくれるのか。
これだけ待った分、試してみたくなったの。
ごめんね。
目の前であれだけの演技をして、演技とわかっていても行動に出てくれたんでしょ?
腸が煮えくり返った顔してさ。
めちゃくちゃ胸締め付けられた。
嬉しかったよ、ジロウからキスしてくれたこと。
一生懸命慣れてないキスで上書きしてくれたこと。
ちゃんと言葉にして伝えてくれたこと。
立場上、ジロウも随分苦しんだみたい。
我儘言って困らせてごめん。
もう隠しきれなくて藻掻くのやめた。
どう考えたって私にはジロウが必要で。
ジロウ以外は要らないって結論付いた。
他の誰かじゃ代わりになれないんだよ。