甘い蜜は今日もどこかで
第7章 【愛したい守りたい】
「ごめんなさい、キスはダメです、もう、その気持ちにはお応え出来ません」
「まだ返事しないでって言ったのに」と顔を上げてきた。
ほんのり赤い頬でトロンとした目。
きっと覚えてないフリ。
覚えてないテイで誤魔化すでしょう?
「元の関係に戻りましょう、私が勘違いしていました……自分の立場をちゃんと理解出来ていなかったです、ごめんなさい」
「それってどういう意味?」
急に真面目な声で聞き返してくる。
怒って当然なのかもね。
酔ってるフリ、バレちゃいましたね。
「そのままの意味です、出しゃばったことしてすみませんでした」
「出しゃばったこと?何それ……俺はそんな風に思った事なんてないよ、寧ろ椿が居てくれたからここまで来れたんだ……だから、もうキスしないとか言わないで……俺から離れるな……ほら、飲んで?」
「あの、お酒は……」
おちょこに注がれて渡されるも置いてしまう。
そしたらそれを自分で飲まれた。
ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間。
まさかの、口移し。
逃げれないように顔を包み込まれて。
最初はイライラしているように感じた。
でも私が喉を鳴らした瞬間、舌を絡ませてきて拒む私に何度も唇を重ねてきた。
泣きながら、噎せ返るようなアルコール度数の高いキス。
違う………ちゃんと断らないと。
「あのっ……副……社長……んんっ」
1ミリも動けない。
独占欲に塗れた終わらない、終わらせないキス。
舌を甘噛みすれば中断出来るけど、全身全霊でぶつけてくる副社長の想いがそれを阻んでくる。
気持ちのないキスして、残るのは虚しさだけなのに。
それでも良いから…と言われてるみたいな舌遣い。
閉ざしたままの私にようやく気付いて唇を離してきた。
「好きだ……好きだよ、どうしたら良いの?いつも、どんな時でも、椿が浮かんでくる……手に入れたい……ずっと傍に居て欲しい……傍に居てくれたら、何だって出来そうな気がするんだ、失いたくない」
ヤバい、ヒートアップしてきてる。
周りに誰も居ない。
ジロウが居ない。
一人でちゃんとケジメつけなきゃ。