甘い蜜は今日もどこかで
第7章 【愛したい守りたい】
「飲めよ、今日は椿のお陰で助かったんだ、お礼も兼ねての食事なのに」
「副社長、それ、アルハラって言うらしいですよ?部下には使わないようにしてくださいね」
俗に言うアルコールハラスメント。
飲め飲め、と勧めること。
「別に今日くらい良いだろ」と拗ねる口元。
UNEEDの人間である以上……というより、ジロウの彼女である以上2人きりでお酒を飲むという行為は仕事であってもしたくない。
「ザルなんだろ、どうせ」
「まぁ、そうなんですけど、でも今日は副社長が気持ち良く飲んでください、ちゃんと面倒見ますから」
お酌して「ね?」と微笑む。
此処は個室、忘れちゃいけないのは適度な距離感。
「好き……もう椿しか考えられないんだって……返事はまだしないで、聞くだけ聞いて?」
「え、もう酔ってます?んふふ、早いですね」
「椿……お前、本当美人だよな、どストライクなんだよ」
「へぇ、そうなんですね」
店員さんを呼び出しお水を貰う。
日本酒2合で酔っちゃったんですね。
元々弱い体質だからこの先ちょっと心配。
グイッと引き寄せ、もたれ掛かられた。
こんな日もアリなのかな。
全部無事に終わってホッとしてるんだよね。
酔ってるフリ?
それとも本当に酔ってる?
この固まった気持ちをどのタイミングで言おうか。
今日はそのタイミングではなさそうね。
「椿の部屋行って良い?」
「ダメです、何考えてるんですか?」
「3日……我慢した」
「……すみません、仕事を離れて」
「連絡ひとつもないんだもんな、秋山さんに聞いたらそれで終わり?俺は声だけでも聞きたかった……」
肩に頭を乗せながら拗ねられてしまった。
お酒の力を借りるつもりなのかな。
非常に答えにくい質問。
曖昧な態度は良い結果を生まない。
「私の声聞いちゃったら飛んで来ちゃうんじゃないですか?そう思ったから控えたんですけど」
「つ〜ばき〜」
「はいはい、此処に居ますよ」
背中をトントンしてあげたらイケると思われたか。
「キスして良い?」なんて聞いてきて、やっぱり言わなきゃなって思うけど……コレ覚えてるか?
出来ればシラフの時に言いたいんだけどな。